サンタクロース色々

投稿者: | 2006年12月8日

クリスマスに因み、前回に引き続いてサンタネタです。
と言ったものの、実はイエスキリストの生誕を祝うクリスマスとサンタクロースは本来あんまり関係がなかったりします。クリスマスイブに子供たちにプレゼントを配るサンタクロースのおじいさんというキャラクターがほぼ現在の形で誕生したのは19世紀のニューヨークと言われています。元々の由来として有名なのは4世紀の小アジア(現在のトルコ辺り。当時は東ローマ帝国領)の司教だった聖ニコラウス(Saint Nicholas)の伝説で、この時点ではクリスマスとも子供ともリンクしていませんでした。この聖ニコラウスの命日が12月6日なので、その前夜、5日の夜に子供たちにプレゼントを持ってきてくれるキャラクターが後のキリスト教圏で幾つか生まれることになります。
オランダでは、聖ニコラウス(Sint Nicolaas)を縮めたシンタクラース(Sinterklaas)と呼ばれるプレゼンターが子供たちにプレゼントをくれるシンタクラース祭というのが現在も続いています。ちなみに、聖ニコラウスはアムステルダムの守護聖人でもあります。17世紀に新大陸に植民したオランダ人はマンハッタン島にニュー・アムステルダムを建設しますが、この新しい町はその後植民してきたイギリス人の手に渡りニューヨークと改名されます。その際、イギリス人がシンタクラース(Sinterklaas)を聞き違えてサンタクロース(Santa Claus)と表記しました。
一方、イギリスにはFather Christmasという、クリスマスにプレゼントをくれるキャラクターがいました。ヨーロッパ圏の多くは類似のキャラクターがいますが、プレゼントをくれるのはクリスマスだったり新年だったり色々です。イギリスの場合はアングロサクソンのOld Winterという冬の到来を告げるキャラクター(プレゼントはくれない。むしろ、訪問を受けた人が丁重にもてなす。そうするとその冬が楽になる)にバイキング侵略時代に北欧神話に基く習慣が融合し、たまたま時期的に冬至に近いクリスマスに子供たちにプレゼントを持ってきてくれる、という形に発展したようです。ヨーロッパ高緯度地域では夏至、冬至に特別な意味を持たせる習慣が古くからあり、冬至の時期に何らかの恵みをもたらしてくれるキャラクターというのはキリスト教以前から一般的でした。キリスト教が入ってからは聖ニコラウスを始め、その辺りの時期に由来のある聖人のどれかと結びついた例もありますが、プレゼンターのキャラクターとしては妖精みたいなのとか日本のなまはげみたいなのとかもいて、あまりキリスト教っぽくない場合も多いようです。
さて、ニューヨークでオランダのシンタクラースとイギリスのFather Christmasの融合によって誕生したSanta Clausは、新大陸では瞬く間にスタンダードになります。イギリス本国もこれを逆輸入し、現在英連邦においてはサンタクロースとFather Christmasはほぼイコールです。その後、各地のプレゼンターキャラの要素を取り込みつつ衣装やトナカイの引くソリ等のアイテム類も標準化され、20世紀初頭にはほぼ現代と同じスタイルになります。尚、現在のサンタクロースのスタイルはコカ・コーラ社の宣伝キャラクターに由来するという俗説がありますが、コカ・コーラ社がサンタクロースを宣伝に起用したのは1931年であり、それ以前の出版物に既に現在と変わらないスタイルのサンタクロースが登場しているのでこの説は誤りです。
他の多くのアメリカ文化と同様、新しいサンタクロースも世界中に広まりました。元々似たようなキャラクターが存在したヨーロッパ諸国では、イギリスのようにすんなり置き換わった例もありますが、別々に共存している場合も多いようです。オランダでは12月6日の聖ニコラウスの祭日と25日のクリスマスで明確に役割分担され、5日の夜にはシンタクラース、24日の夜にはサンタクロースが別々にプレゼントをくれるそうです。他の国では元のキャラと融合していたり、共存していてもプレゼントをくれるのはどちらか片方のみという場合が多いようです。尚、キャラ的にはほぼ同一であっても本来le Pere Noel(フランス)なりPapa Noel(スペイン)なりBabbo Natale(イタリア)を使うべき文脈でSanta Clausを使うと「アメリカ的」だと非難されるそうです。ホントかな?この辺りはネタ元のWikipedia日本語版と英語版で解釈が違うようで詳細は不明です。
サンタクロースが住んでいるのは、一般的には「北極」ということになっているようです。現在、北欧五ヶ国(スウェーデン、ノルウェー、フィンランド、デンマーク、アイスランド)は全て自国領内にサンタクロースが住んでいると主張しています。サンタクロース宛ての手紙の発送先としてのサンタ郵便局もフィンランドのロヴァニエミのものが有名ですが、スウェーデンにもデンマークにもあります。(あとは知らん)これらの国々がサンタクロースをとても大切にしているかといえば実のところそうでもなく、あくまでも外国向けの商業主義的なポーズのようです。
僕は北欧でクリスマス時期を過ごしたことがあるのですが、プレゼントを貰うほど子供でもなく、まだ独身の若い人たちにとっては家族とまったり過ごして教会に行ったりするクリスマスより、12月16日の聖ルシア祭とか冬至にまつわる各種ローカルイベントの方が盛り上がるようでした。そう言えば街中でもサンタクロースのキャラクターとかほとんど見なかったような気がします。聖ルシア祭はどこでもというわけではないのでしょうが、僕がいたところでは何故か主役はスウェーデン人の女の子、付き人(?)役はデンマーク人の男の子と決まっていて、何かよう分からんけど楽しそうでした。祭の後、暖炉の前でお姫様と付き人の衣装のままプレイボーイっぽい兄ちゃんがすんげぇロマンチックなセリフ(だと思うけど音はあんまりきれいじゃないんだな、デンマーク語って)で女の子を口説いてたりして、あーもう若いっていいよなちくしょーな気分で見てたおっちゃんはちょっと疲れたけど面白かったです。あと、デンマークの習慣だと思うのですが友達内でランダムにペアリングを決め、ニッセ(妖精みたいなの)になり切って相手に誰か気付かれないように1週間くらいかけていろいろいたずらをするというのも面白かったです。僕のターゲットは英語が苦手なデンマーク人の女の子だったので、メッセージの類を全てデンマーク語で書いたりして最後まで正体を隠し通しました。色々ありましたが、クリスマスが近づくと次から次へと日本では全く馴染みのないキャラクターが出てきて、相対的にサンタクロースはかなり影が薄い印象を受けました。
さて、太郎のイメージの中のサンタクロースはどんなキャラクターなのでしょうか。日本のサンタクロースはアメリカ直輸入の、いわば由緒正しいサンタクロースです。いつまで信じていられるか分かりませんが、できればなるべく長い間、サンタクロースを純粋に信じるピュアな(単純な)心を持ち続けてもらいたいものです。

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