上海出張

投稿者: | 2014年11月8日

SNS、特に140字のtwitterに慣れてしまうとなかなかブログの記事を書こうという気にならない。長文の投稿も140字までに分割して書くクセが付いてしまうのはあまりよろしくない気がするので、久しぶりに海外出張ネタでも書いてみよう。(ここまで116字。既にクセが…)
IAEAの共同研究に関する国際会議で、先月上海に行ってきた。IAEAが行う民生用原子力利用に係る研究活動は色々な形があるが、今回参加しているのはCRP:Coordinated Research Projectというもので、参加する国、機関がそれぞれ持ち出しで費用を負担する形になっている。とは言え、会議を主催するとそれなりに費用も掛かるので全ての会議をウィーンのIAEA本部で開催することはできず、ホストも持ち回りになったりする。今回は上海にある中国の核工程研究設計院というところがホストを引き受けてくれたのだ。会議期間中全てのランチとディナー、ホテルから会議場までの送迎の面倒を見てくれて、会議の合間にはちょっとした軽食や飲み物も用意されていて、持って行った現金を本当に1元も使わなかった。アジア的なホスピタリティというか、アメリカやヨーロッパでは考えられないほど至れり尽くせりだった。まあ、ちょっと飲み物やスナックを買うにも苦労するのも事実だが。
他の参加者はそれでも夜連れ立って飲みに行ったりしていたようだった。今回の出張では日本人同士の付き合いの必要がなく、できればそうした交流にも参加したかったのだけど、発表の準備や抱えている別件の対応などで全く余裕がなく、ホテルの部屋に籠もってひたすら仕事をしなければならなかった。
ただ、ほとんどの参加者が同じホテルに泊まっていたので朝食の時には必ず誰かと顔を合わせた。普段の国内出張だと朝食は大急ぎで掻き込むことが多いけど、なるべく余裕を持って準備しておき、色々な人と同じテーブルに着いてゆったりと話しながら食べるようにした。他の会議で元々知っている人も何人かいたのだけど、これまでは立ち話程度しかしたことがなかったのが、今回で随分親しくなることができた。昼や夜の会食でも、なるべく一緒に出張した上司を含む他の日本人を避けて席に着くようにしたので、余計な気遣いをすることなく会話を楽しむことができた。これまでの海外出張はほとんどがお客さん(日本人)と一緒だったので、国際会議であってもあまり好き勝手にはできなかったのだ。
この共同研究プロジェクトには自社研究として持ち出しで参加しているので、予算は厳しいけど自由度は大きい。お客さんの後に控えておとなしくしている必要もなく、思ったことを好きなように喋れるというのは遙かに気が楽だ。プレゼンも自分でやったのだが、やはり発表した後には休憩の時などに色々な人が話しかけて来た。業務出張なので会社にとって有益であることが第一だが、自分自身にとっても得るものの大きな出張だった。日本人は優秀な人でも海外では奥ゆかしい人が多く、せっかく良い発表をしてもアピールがおとなしすぎて(発表資料を裏で作っている者としては)見ていて歯痒い事も多い。私は経験も技術力も大したことはないけど、神経が図太いのであまり物怖じすることはない。それがいつも良い方向に働くとは限らないけど、「阿吽の呼吸」が通用しない海外で必要以上に奥ゆかしいのは、マイナスでしかないと思う。
さて、ホテルの部屋に籠もって仕事をするにはまずは会社のネットワークに繋がないことにはどうしようもないのだけど、今回はそこで随分苦労した。ホテルは5つ星だったので無料のインターネット接続が提供されていて、部屋番号とパスポート番号の下5桁で認証するという仕組みだった。会社のセキュリティー設定がWeb認証タイプの公衆回線と相性が悪く、国内でもいつも苦労するのだけど、認証ページのURLさえ分かれば面倒なだけで難しくはない。いつもは自分のiPhoneで確認するのだけど、今回何故かiPhoneは認証なしで繋がってしまい、URLの確認ができなかった。ホテルのスタッフに聞いてみたのだけどなかなかこちらの意図が伝わらず(これはまあ仕方ない)、ホテルのITスタッフに部屋まで来てもらって見てもらうことになった。プロキシの設定を少し変えたところ無事に認証ページにリダイレクトされ、目的はすぐに達成できたのだけどこのITスタッフというのが確認と称して次々とパソコンの設定画面を開くので、勝手に設定を変えられないよう一瞬も目を離せなかった。好きなような弄らせていたら何をされるか分かったものではない。
無事にインターネットに繋がり、VPNを通して会社のネットワークへの接続もできるようになったのだけど回線品質は不安定で、できることはかなり制限された。まあ、メールが使えて社内のファイルサーバーにアクセスできれば何とかなる場合が多いけど、Webがほとんど使えなかったのは不便だった。
会社のVPNを通さないインターネットでは、有名な話だが政府によるフィルタリングが働いていてGoogleのサービスやtwitter、facebookといったSNSは遮断されている。これを回避するためのサービスも色々あって、国外のプロキシやVPNサーバーを経由し、そこまでの通信を暗号化することで検閲を回避するものが多い。実は事前に1つ用意していたのだけど、実際に試してみると見事にブロックされていた。検閲回避目的のVPNはバレるとブロックの対象になるようで、常に新しいサーバーを立てて当局とイタチごっこを繰り返しているような状態らしい。現地で見付けたサービスは繋がるときと繋がらない時があって、繋がってもある程度の時間が経つと勝手に切断されたりした。サーバー側の問題かフィルタリングのためか、あるいは単にネットワークの遅延によるものかは分からない。とにかく、どこででもインターネットが使えるのが当たり前になって久しいけど、ネット接続にこんなに苦労するとは思わなかった。
なお、日本の携帯電話事業者が提供するローミングサービスでデータ通信すればこうしたフィルタリングは一切なく、特に苦労することもないらしい。当局が気にするのはあくまでも国民であって、外国人が外国のサービスを利用することにはそれほど頓着しないようだ。今は昔と違って国際ローミングでのデータ通信も定額制になっている。1日3000円弱だったと思うが、そのくらいの出費を気にしない人なら余計な苦労はしなくても済む。貧乏性の私は苦労してでも余計な出費を避けたい。
ホテルと会議場の往復もバスでの送迎で、ダウンタウンを散策する暇もなく、上海の街はほとんど何も見ていない。ただ、間に1日だけ工場を視察するという行程があり、これもバスでの移動ながら少しだけ「見る」ことができた事について書いておこう。
目的地の工場は溧陽(簡体字では「溧阳」、読みはLiyang)というところにある。南京に近く、上海からは300kmほど離れている。3時間半ほど掛けてバスで行ったのだが、ほとんど山らしい山のない平坦な地形ということもあり、視野の中から高層ビルを含む市街地が消えることはなかった。ほんの一部しか見ていないが、この国の圧倒的な人口の多さを垣間見た気がした。
大気汚染については上海の町中では気にならなかったが、開けた場所だとやはり空気が霞んでいるのが分かる。今の季節は空気が澱みにくく、暖房用の石炭消費も少ないので一番マシなはずだが、それでも大気汚染は深刻な問題なのだろう。尤も、霞が本当に汚染なのかどうかは分からない。周りのヨーロッパ人たちは皆汚染だポル-ションだと騒いでいたけど、私を含め気象学の知識がある人は、多分誰もいなかったと思う。
工場の視察は、会議室かどこかで簡単な説明を受けて、用意された弁当を食べて現場を見る、といったものをイメージしていたのだが、実際には随分趣が違った。まずは工場ではなく市内の一流ホテルに案内され、披露宴にでも使うような大広間に設えた会場で工場の運営会社の会長、社長列席のもと、大スクリーンで紹介ビデオを見て、逐次通訳付きでプレゼンと質疑が行われた。そのままホテルのレストランで本格的な食事をし、工場を視察した後は再びホテルの会場で質疑を行った。全て工場側の負担でやっているはずだが、とてつもなくお金が掛かっていると思う。それでも、原子力用の資材を製造し、国外のマーケットにも浸出しようとしているこの会社にとっては「IAEAの専門家が視察に訪れ、高く評価した」という実績を作ることには十分な価値があると判断したのだろう。
工場は複数の敷地に分かれていて、時間の都合で1つ以外はバスで通り過ぎるだけだったが、通り過ぎるだけの工場にも「熱烈歓迎 IAEA何とかかんとか」という立派な看板が設置されていた。
(書きかけだけど一旦公開)

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