電動自動車

投稿者: | 2018年1月21日

長らく更新していなかったが、たまには長めの文章も書いておこう。
もう1年以上前になるが、車を買い換えた。以前の車はかなり年式の落ちた車を中古で買って、さらに10年ほど乗っていた。エンジンや保安機器類には全く不具合はなかったのだけど、ドアロックやパワーウインド、格納ドアミラーの駆動部など電動部がたまに動かなかったり、オイルパンのシールが劣化していて少しずつオイルが漏れて駐車場を汚してしまったり、メタリック系の塗装が日に焼けてボンネットがかなりみすぼらしい外観になっていたりと、まあそろそろ替え時ではあった。
実は自家用車を手放してカーシェアに移行することを検討していた時期もある。子供も大きくなってそれほど家族で出掛けることもなくなったし、一人暮らしだった義母も施設に入って以前ほど頻繁に訪問しなくてもよくなったし、何より割と近所のタイムズがカーシェアを扱うようになったからだ。計算してみて、毎週平日の夜に1回と週末の午後半日に利用すると仮定しても自家用車を所有するのに比べて半分ほどの費用で済むことが分かった。いつでも思い付いたときに利用できるという利便性との比較になるが、カーシェアも悪くないと思っていた。
状況が変わったのは、一戸建てに引っ越したからだ。新居には駐車スペースもあって、駐車場に掛かる費用は考えなくてもよくなった。新居は以前の公団のすぐ近くだが、タイムズからは少し遠くなってしまったというのもある。そして家からすぐに車に荷物を出し入れできるというのはやはり便利だ。
さて、新居は環境を売りにしたイマドキの住宅ということで、最初からEV用の充電コンセントが設置されていた。各家庭への受電は200Vなので、新築時に設置する分には追加コストは数千円程度だろう。どうせなら次の車は電動車両にしたい、というのは引っ越した時から考えていた。
電動車両といっても、選択肢はそれほど多くはない。市販されている国産車では純粋なEVは日産のリーフと軽自動車の三菱i-MiEVだけ。充電もできるプラグインハイブリッドがトヨタのプリウスPHVと三菱のアウトランダーPHEV。それだけだ。当初は価格的に手が届きそうだったi-MiEVの中古を検討していたが、結局かなり高い買い物になったがアウトランダーPHEVを中古で購入した。初代の発売から3年が過ぎて、初回車検前の車が中古車市場に出回ってそれ以前よりは価格がこなれていたのだ。
新車では400万円以上する(各種の補助金でいくらかは補填されたはずだけど)車で、僅か3年落ちなのでこれまで所有したどんな車よりも高級で、満足感はとても高い。高い値段を払ったという認知バイアスもあるのだろうけど。

いつもながら前置きが長くなったが、本題は電動車両というのが実際のところどの程度「環境に優しい」のか、ということだ。我が家が購入したPHEVは純粋なEVではなく、ガソリンエンジンを搭載してガソリンでも走ることができるプラグインハイブリッドだが、日常的な利用ではほとんどエンジンは使わず、電気だけで走っている。公共の充電設備も何度か使ってはいるが、充電もほとんどは自宅で行っている。以下では特に区別せず電動車両の電気による走行として考えてみたい。
まず、電気で走るEVは「走行中に」排気ガスを出さない。そのためクリーンなイメージがあるし、実際に中国やインドでは自動車の排気ガスが都市の大気汚染の主な原因になっているのでその削減を期待してEVを推進したりしている。ただしEVが走るのに使っている電気はどこかで作らなければならず、その電気が質の悪い石炭を使った火力発電所で作られていれば、車から排気ガスを出さない代わりに発電所の煙突から煤煙とCO2を吐き出していることになる。
では火力発電で作った電気で走っている限りEVは環境に優しくないのかと言えばもちろんそうではない。ガソリンエンジンやディーゼルエンジンのエネルギー効率よりは旧式であっても火力発電所の方がエネルギー効率は高いし、大気汚染対策にしても移動体である自動車で対策するよりも発電所で対策する方が遙かに容易で効果も高い。また、新聞報道などでもエネルギー効率と言えば単体でしか考えない傾向があるが、実際には”well to wheel”のエネルギー効率で考えなければならない。つまり、内燃機関(普通の自動車用エンジン)の自動車がどこでも自由に走れるのはどこにでもガソリンスタンドがあっていつでも給油できるからだ。これを実現するためにはガソリンスタンドの店舗を維持し、毎日のように製油所からタンクローリーで燃料を輸送し、製油所は製油所で品質と供給量を維持しなければならない。こうした一つ一つには当然ながら人手とコストが掛かり、エネルギーも消費する。もちろんこれは電気についても同様で、発電所までの燃料輸送や発電所から家庭までの送配電の過程で消費されるエネルギーを考える必要がある。
油田(well)で原油を汲み上げた状態から巡り巡って最終的に自動車のタイヤ(wheel)を回すところまでに費やされたエネルギーを全て考慮して初めて、ちゃんと意味のある比較ができる。EVの場合、”well to wheel”のエネルギー効率というのは元の電気をどうやって発電しているかに大きく依存する。極端な話、原子力や再生可能エネルギーなど化石燃料に依存しない発電方法で全て賄った場合はwellという概念自体がなくなる。2017年現在の日本においてはほとんどの電気は化石燃料依存(主に天然ガス)だが、ガソリン供給インフラの維持に掛かるエネルギーを考慮しなくてもEVのエネルギー効率は内燃機関車に勝る。
(このところ未完成記事ばっかりだけど、これも途中だけど公開)

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