タイ旅行

投稿者: | 2006年4月27日

タイ、チェンマイに行ってきました。昨年の台湾に続いて2回目の海外家族旅行、今回は(も?)思い立ったのが出発の6週間ほど前、目的地が最終的に決まって航空券を買ったのが購入期限ぎりぎりの出発4週間前というきわどい日程でした。忘れないうちに書いておきます。

出発まで

そもそもの発端は、3月上旬のたろ母の誕生日でした。モノのプレゼントより、旅行がしたいということで考え始めたのです。最初は海外に行くつもりはなくて、近場の温泉か、ちょっと足を伸ばしてスキーに行くか、東京に遊びに行くか、といったところを考えていたのです。調べてみるとある程度の日数なら意外と費用がかかることが分かり、これならもうちょっと頑張れば海外にだって行けるんじゃないか、ということで海外も視野に入ってきました。
近場でお手軽な海外旅行と言えば、アジアかグアム・サイパンあたりです。タイ、シンガポール、台湾、グアムくらいで探してみました。結婚前に2人で行ったタイは魅力的だけどちょっと高め。シンガポールはコンパクトで短い日程でもそれなりに楽しめそう。台湾は知り合いが多くて楽だけど家族水入らずにはなれそうもない。グアムは家族連れでも安心して楽しめそうです。 最初は、やはり一番魅力的なタイを考えました。できればチェンマイに行きたいけれど、ツアーの料金は予算をかなりオーバーします。バンコクだけのツアーなら比較的安かったので、具体的な選定に入りました。ところが、3月時点ではタイの政情が今ひとつ不安定で、バンコクではタクシン首相退陣を求めるデモが散発していました。外務省の海外危険情報のページでもバンコクは注意情報が出ていて、小さい子供を連れての旅行だけに無用なリスクは避けようということになり、タイは候補から外れました。
続いてグアムが候補に上がり、まずは満足できそうな内容のツアーが見つかりました。都合のいい日程では3人の枠がほぼ埋まりかけていたので、とりあえず予約を入れました。ところが、ツアー行程をよく調べると帰る日の現地出発がほとんど深夜です。関空着が朝なので、たろ父はそのまま徒歩5分の職場に向かえば休む日数が1日節約できる行程です。ですが、太郎にとっては深夜にホテルを出て、空港で長時間待たされるというのは相当辛い状況です。帰った日は1日休むとしても、ヘタをすると熱を出してもおかしくありません。午前発の便もあるのですが、それだとツアー料金が大幅にアップしてしまいます。結局、これもキャンセルしました。
ここまでは、子供連れならパックツアーが楽だろうとパックツアーだけを探していました。ちなみに、たろ父はこれまでヨーロッパ、アフリカなど10ヶ国以上を旅行していますがパックツアーは一度も経験がありません。経験のあるたろ母によればとにかく全部面倒を見てくれるから楽だけど、全員の集合を待たなければならないためどうしても待ち時間が多くなる、これでもかというくらい免税店巡りをさせられる等のデメリットもあるそうです。全く初めての国ならパックツアーが無難でしょうが、ある程度知っているところなら自分たちで組み立てるのも悪くありません。そこで、もう一度タイにスポットが当たりました。
リスクのあるバンコクは避け、北部のチェンマイのみに絞ります。航空券だけなら、それなりに安いものもあります。グアムなどに比べると物価は格段に安いので、ホテルを取って、現地発の1日ツアーを1本予約しても一応予算内に収まりそうです。ホテル、現地ツアーはインターネットで申し込みました。丸一日滞在できるのは実質2日だけなので、1日を象乗り・筏川下りのアウトドア系ツアー、もう一日を寺巡りと市内観光にあてることにします。ホテルは以前にも泊まったところにしました。値段の割に十分高級だし、名物のナイトバザールに歩いて行けるロケーションです。着いた日を含めて3晩のうち、疲れていない日にふらっと行けるでしょう。寺巡りも大体ターゲットを決め、交通手段や値段の相場を大まかに把握しておきました。

初日

出発当日。この雑記帳の一つ前のエントリの翌日です。前日にケンカとその後の対応の件で保育園と長時間の話し合いをしたりしましたが、そのことはひとまず忘れて旅行です。11:45発の便なので、余裕を持って9:30頃関空に着くよう家を出ます。前回台湾に行った時同様、空港まで車で行ってパーキングサービスに預けます。料金は3泊4日で6800円でした。チェックイン、出国手続きを済ませます。ゴールデンウィーク前なのでそれほど込んでおらず、ほとんど待ち時間はありませんでした。去年の台湾旅行の時は出国エリア内のキッズルームで時間を潰しましたが、今の太郎なら1時間くらいは待てるだろうと真っすぐ搭乗ゲートに向かいました。今回利用するのは往復ともタイ国際航空、バンコクでの乗り継ぎです。機内で早速使えるよう、太郎にタイ語の挨拶を復習させます。今回の旅行に合わせ、こんにちは(今晩は、さようならも同じ言葉)、ありがとうに加え1から10までの数の数え方を覚えてきました。父は更に、値段交渉に必要な数語と999までの数え方を覚えています。尤も、値段交渉が必要なのはせいぜい100B(バーツ)くらいまででしょう。
関空~バンコクのフライト時間は5時間強です。窓際に3つ並んだ席でしたが、主翼の真上なので見晴らしは良くありません。ま、高高度を飛ぶ国際線ではあまり関係ありません。ほとんど揺れることもなく、快適な飛行でした。斜め前の席で赤ちゃんがお母さんに抱かれていて、ちょうど目が合うので表情だけで相手をしてやるとえらく喜んでいました。お母さんはタイ人なのか、アテンダントさんとタイ語で会話していました。連れの日本人らしい男性はタイ語も英語も分からないようでした。太郎は1時間ちょっと寝たようです。
バンコクでのトランシットは1時間半ほどの待ち時間でした。ターミナル内を歩いて移動する際、かなりの長距離トランシットのサインがなくてちょっと不安になりましたが、事前にネットで色々調べていた時に同じことを書いている人が何人もいました。待ち時間の間に両替を済ませます。普通、他国通貨から現地通貨への両替より逆の方がレートが有利なので両替は国境を越える前にする方がいいのですが、円とバーツに関してはどちら方向もタイ国内の方が有利なのだそうです。今回は、日本円は両替せずに家に余っていた米ドルを240ドルばかり両替しました。
待合で、飛行機の中で見た赤ちゃんを見つけました。太郎が話をしたいというので話に行きました。しげるくんというその赤ちゃんはまだ0歳。お母さんがチェンマイの出身で、赤ちゃんを見せに里帰りということでした。割と年齢が離れていそうな連れの男性は、何となくおじいちゃんと思っていたのですがそういう状況でおじいちゃんが付いて来るというのもヘンなので、お父さんなのでしょう。そう言えばしげるくんと良く似ていました。
バンコク~チェンマイの国内線は一回り小さい機体で、窓際は2列でした。たろ父は、通路を隔てて中央部の席に座りました。水平飛行に入ってしばらくすると、隣に座った白人のおじさんが話し掛けてきました。聞けば、カナダ出身というそのおじさんはもう2年ほどチェンマイに住んでいて、NGOの仕事でモンゴルに行った帰りとのことでした。娘さんがJETプログラム(公立の中、高の英語補助教員として英語圏の人を雇用する文部科学省のプログラム)で日本にいたらしく、着陸まで色々話し込みました。ついでに、チェンマイ国際空港でのタクシーの拾い方と相場について質問してみました。「ターミナルビルを出たところで簡単につかまるよ。市内までなら250~300Bくらいかな。7ドルくらいのもんだから、安いもんだよ」とのお答え。えーと、私の事前調査では国内線到着口の横にエアポートリムジンのカウンターがあって市内まで120B均一料金のはずなんですが。外でタクシーを拾うと吹っ掛けられることがあるという情報もありましたが、300Bは高すぎるんじゃないでしょうか。
おじさんとはゲートで別れ、我々は入国審査に向かいます。ここでも待ちはほとんどありませんでした。検査官の机の前にWebカメラみたいなのが付いていて、顔写真を撮っているようでした。特にトラブルもなく無事入国。到着口を出て、ターミナルビルの反対側にある国内線到着口に向かいます。果たして、良く目立つエアポートリムジンのカウンターがありました。料金も調べた通り120B均一でした。あのおじさんは、車を持っているとかでタクシーはあまり使わないのでしょうか。それとも…
空港からホテルまでは15分程度。ホテルに着き、チェックインを済ませて部屋で一息つきます。時間は午後6時過ぎ。まだ外は明るいのですが、時差が2時間あるので日本時間は8時を過ぎています。道理でお腹が空いています。道路をはさんでホテルの前にある食堂に食べに行くことにしました。客のほとんどは地元の人のようですが、さすがにホテルのすぐ近くなので英語のメニューも置いてあり、店の人も何人かは英語が話せるようでした。店の一角では店の人の子供と思しき子供たちが勉強か遊びか、ノートに何やら書き込んでいました。そのうち小さい子が床を這いまわったりし始めました。店の人は注意はしても怒るわけでもなく、他の客も気にしていなかったりにこにこしながら見ていたりで、子供には寛大な文化のようでした。デザートにマンゴーを頼んで3人で160B教。バンコクの屋台だったらこれでも100Bもしない気がしますが、一応レストラン形式の店としては十分に安いでしょう。日本円で560円くらいでしょうか。
食事の後、そのまま徒歩でナイトバザール見物に行きました。衣類、手芸品などの屋台が所狭しと並んでいます。行き交う見物客の大半は白人です。ヨーロッパはまだ寒い季節なので、暖かいタイは人気があるのでしょう。翌日は早くから象乗りに出かけるので、早めにホテルに帰りました。シャワーを浴びた後、歯ブラシが置いていない事にに気付きました。多分あるだろうと思って歯ブラシは持ってきていないのです。フロントで確認すると、歯ブラシは置いていないとのこと。仕方なく、父だけもう一度ナイトバザールに行って歯ブラシを調達してきました。意外と高く、日本で買うのと同じくらいでした。ホテルで置いていないのも納得できます。

2日目

この日は事前に予約していた象乗り、筏川下りなどのツアーです。7年前に来た時も、ほぼ同じ内容のツアーに参加しました。その時はバンコクの空港にあったエージェントのカウンターで予約して、1人1000Bくらいだったと思います。ただ、最後に「時間が余ったから」と無理やり連れて行かれた蛇のショーで500Bくらい取られて、現金が足りずにガイドさんに借りなければならなかったということがありました。ショーの内容から察するに、500Bのうち300B以上はガイドさんにバックされているように思いました。今回は、事前にネットで予約して1人1680Bです。キャッシュバック目当ての「オプション」がないとは限りませんが、現地でほとんど口約束だけで売っているものよりは安心でしょう。
早めに朝食を済ませ、ロビーで待っていました。ツアーガイドらしき人が何回か「○○さんですか?」と聞いてきますが、なかなか我々のガイドさんは現れません。約束の時間を少し過ぎた頃、若い女の人が声をかけてきました。どうやら、名前のスペルが正しく伝わっていなくてホテルのフロントでの確認に時間がかかったようです。彼女のメモには、私の名前が”Hider”と書いてありました。ひでーる?ちょっとフランス風?みたいな。
太郎の年齢を聞かれたので、太郎がタイ語で「ハー!」と答えるとにこにこ笑っていました。彼女も同じ年の男の子がいるそうです。相手がお母さん、しかも子供が太郎と同い年の男の子と聞くと急に親しみを覚えます。車に乗り込むと、乗っているのは我々だけです。聞けば同乗者はいないとのこと。これはラッキーです。プライベートツアーでこの値段なら値打ちがあります。7年前の時は3グループ、6人でした。
客が我々だけなので、道中の会話もツアーの説明だけでなく、子供の話が多くなります。タイの人は辛いものばかり食べているイメージがありますが、子供はやはり10歳くらいまでは辛いものは食べられないそうです。Santienさん、という彼女の子供も甘いものばかり好きで、虫歯がかなり酷いとか。太郎の綺麗な歯を羨ましそうに見ていました。
メーピン(Mae Ping)のエレファント・キャンプまでは1時間くらい。太郎は途中ちょっと眠たくなっていましたが、着くと元気になりました。何頭かの象が出迎えてくれます。曲げた前足の膝に座らせてくれたり、背中に乗せてくれたりしているのですが相変わらず怖がりの太郎は象に触ることができません。象にあげるためのバナナが所々で2房30Bで売っていて、太郎に持たすと喜んであげに行くのですが象が鼻で直接手から取るのが怖いらしく、2mほど離れたところから地面に投げてばかりいます。父が一緒に手に持って直接あげるのも怖がっていましたが、何度目かのトライでようやく直接手渡せ(?)ました。
その後、象たちが川で水浴び(すごく気持ち良さそうだった)するのを見て、ショーを見せてくれる場所に移動します。ショーの内容はサーカス等で見るものと同じような感じでしたが、一つ驚いたのは象たちが絵を描いたことです。あらかじめ絵の具を付けた絵筆を渡してもらってキャンバスに描いていくのですが、本当にちゃんと「絵」を描くのです。それぞれ何を描いてあるかはっきりと分かり、その点においてはたぶん太郎よりも上手です。なかなか見応えのあるショーで、太郎も楽しめたようです。
ショーが終わると、いよいよ象の背中に乗っての散策です。背中に木製のベンチが固定されているので、子供でも安心して乗れます。途中でもバナナを買えるところがいくつかあって、背中から象にバナナをあげることができます。バナナをあげるとき、象使いの人が「モール!」と言っているので真似をしてみると、ちゃんと鼻を背中の上に伸ばして来ました。太郎も面白がって何度もあげていました。我々が乗った象は、他の象よりだいぶ沢山バナナにありつけたと思います。象使いの人たちは地元の人で、民族も言語も平地のタイ族とは異なります。象使いは象の頭の上や首のあたりに座っているのですが、途中で太郎にベンチを降りて頭に座りたいかと身振りで聞いてきました。怖がり太郎にそんな芸当ができるはずもなく、代わりに父が象使いの場所に座りました。7年前にも同じ経験をしているのですが、その時はかなりベテランの象だったのか、それとも象使いが相当大らかな性格だったのか、かなり長い距離を完全に任されて(カギみたいな道具も貸してくれた)象使いは離れたところをのんびり歩いていました。今回は若い象のようで、何度も象使いに叱られたりしていて、たろ父が頭に座っている間もなかなか思うように動いてくれませんでした。
1時間ほどの散策の後、今度は牛車に乗って元の場所に帰りました。ビュッフェスタイルの昼食の後、竹で組んだ筏での川下りを体験しました。乾季に入ってから水量が減っていて、通常のコースだと2時間近くかかるというので、半分のコースに変更しました。竹の笠を貸してくれましたが、遮るもののない炎天下で2時間はキツすぎます。水量が減っている川の深さは子供の腰くらいで、地元の子供たちが川に入って物を売りにきていました。この川下りも7年前にやっているのですが、その時は確かナミビアへの出張の帰りにタイに寄ったというドイツ人と乗り合わせ、ずっとアフリカの話で盛り上がっていたので他のことはあまり覚えていません。太郎が自分でも竿を操ってみたいと言い出しました。流れが緩やかなところで後ろで竿を操っていたおじさんに身振りでたずねたところ、快く了承してくれました。ま、何でも言ってみるもんです。
キャンプを出た後、象の糞から紙を作っているという工場に向かいます。象の主食は竹などの繊維質を多く含む植物なので、その糞にも繊維が多く含まれていて紙が作れるそうです。洗浄した後の糞は綺麗なもので、臭いも全くありませんでした。途中からの行程は和紙を梳くのと同じような感じで、出来た紙も和紙に近い感じがします。敷地内で加工品の販売もしていて、ノートなど何点かをお土産に買いました。たろ母が買い物している間、太郎は父に抱かれて眠っていました。
眠っている太郎を抱いて座っていると、店の人や地元の人がにこにこして見ています。たいがい子供には優しい文化のようですが、太郎の顔はまた特にタイ人受けするようです。色が白く、丸顔でほっぺが「ぺ」と赤くなっているのが高ポイントらしく、起きて歩いている時でもすれ違う人がよくほっぺを指してにこにこ笑います。見るだけでなくほっぺを指でつんつんしてくる人も多く、女の人だけでなく通りすがりのおじさんとかにもつんつんされていました。
象糞製紙工房の次は蘭(ラン)農園に向かいます。太郎もちょっとの間しっかりと眠ったので、起こすとすぐに起きてきました。種から栽培する方法を幾つものサンプルを使って丁寧に説明してくれるのを、熱心に聴いていました。日本人の観光客もよく来るところなのか、栽培方法を日本語で書いたものも置いてありました。苗のようなものを売っているのですが、日本でちゃんと育つのかどうかは怪しいと思います。蘭園に隣接して蝶や蛾を飼っている場所があり、羽の広さが20cm以上ありそうな巨大な蛾や色とりどりの蝶を見ました。蘭や蝶を使った土産物を販売しているところもあり、ツーリスト価格で決して安くはないのですが1点だけ買いました。太郎が喉が渇いたと言うので、店内の喫茶コーナーのような所でオレンジジュースを注文しました。値段は確認しなかったのですが、いざチェックを頼むと何と70B。ホテル周辺の食堂なら大人の1人1食が35~45B、ジュースは10B程度です。観光地なので2、3倍は覚悟していましたがまさかこれほどとは。ガイドのSantienさんも意外だったらしく、レシートを確認していました。車に戻る間、日本語なら分からないだろうと「たっかいジュースやったな」と言っていたらSantienさんが「タカイってexpensiveよね。やっぱり高いと思った?」と聞いてきました。バレましたか。日本語もちょっと分かるみたいです。ま、200円ちょっとのことで文句を言うつもりはありません。書いてるけど。
ツアーの行程は全て終了。ちょっと心配していたオプションもなく、真っ直ぐホテルまで送り届けてくれました。帰り道、翌日以降のプランについても色々相談に乗ってもらいます。会社の営業も含まれているとは言え、本当に親切にしてくれます。更に、この日(日曜日なのでダンナさんは休み)の夕方、家族でどこかのショッピングモールでやっている恐竜に関するイベントに行くという話をして、「そこで会えるかな?」みたいなことを言っていました。有難い話ですが次の日も朝が早いし、太郎も疲れているようなのでお断りします。太郎に言ったら100%行きたがるので敢えて言いませんでした。ホテルでの別れ際、すっかりSantienさんになついた太郎は「いっしょにおへやにきてほしい」とゴネていました。Santienさんも「後で会えたらいいね」とまた言っていたので社交辞令ではなさそうでした。
シャワーを浴びてさっぱりした後、ナイトバザールに行きました。夕食もバザール内の中華(風)料理店で食べました。ここは客の大半が外国人らしく、ホールに出ている若い店員は皆英語を話すようでした。食べた後、露店を散策しますが途中で雨が降ってきたので早めに帰ることにしました。太郎はずっとトゥクトゥクという、三輪バイクに屋根をつけたような乗り物に乗りたがっていたので、せっかくなのでトゥクトゥクで帰ることにします。大通りに出るとすぐに1台いたのでホテルの名前を告げ、値段を聞くと50Bと言います。歩いても15分とかからない距離なので20~30Bが妥当だと思いましたが、雨も強くなってきたので40Bで妥協しました。ところが、走り出すと曲がるべき交差点で曲がらずに直進します。あまりすぐ着くと文句を言われるのでわざと遠回りしているのかと思っていたら、どうもホテルの名前を間違えていたようで全然違うホテルの前に止まりました。確かに50Bくらい取ってもいい距離です。ホテルの名前を改めて伝え、無事に送り届けてもらいました。気の毒なので50B払いました。まだ早かったけど、翌日に備え早めに寝ることにします。

3日目

この日の予定は午前中に郊外のドイ・ステープという山にあるワット・プラタートに行き、午後から市内を観光するというものです。全行程の中で、唯一全く事前に予約を入れていない1日です。ツアーもあるのですが、割高なのと、1日くらいはある程度成り行き任せで行動する日も欲しかったのでトゥクトゥクとソンテウを乗り継いで行くことにしました。ちなみに、ソンテウというのはピックアップトラックの荷台に対面式の座席と屋根を付けた乗合タクシー(バス?)みたいなものです。もちろん、乗り場や相場などの大まかな情報は調べてあります。
チェンマイ市街は中心部に旧市街を囲む形で正方形の堀があり、堀沿いのいくつかの門が交通の結節点になっています。ドイステープに行くソンテウは、北側にあるチャン・プアーク門(白象門)の前から出ています。ホテルからチャン・プアーク門まではトゥクトゥクでもソンテウでも行けますが、太郎の希望はトゥクトゥク。ホテルの前に1台いたので値段を聞くと80Bとのこと。ソンテウだと1人30Bくらいなので、妥当な値段です。早速乗り込みます。道すがら、話を聞くとそのトゥクトゥクの運ちゃんは8歳の女の子がいるとのこと。子供がいると聞くと何となくいい人に思えてしまいます。ドイステープに行くと伝えておいたので、チャン・プアーク門に着くとドイステープ行きのソンテウを探してくれました。トゥクトゥクの運ちゃんには10B上乗せで支払いました。
ソンテウの運ちゃんは白人の血が混ざってそうなおっちゃんです。ドイステープまで行くことを確認し、値段を聞くと1人40Bとのこと。事前調査通りです。乗り込むと、2人先客がいました。話してみると日本人で、三重県から来たそうです。ドイステープ行きのソンテウは、基本的に客が8人集まるのを待って出発します。人数が揃わない場合は240B~300Bを頭割りするということです。しばらくすると、運ちゃんが交渉に来ました。乗り合わせた2人の日本人女性も目的地はドイステープだけと聞いていたので、オプションツアーの提案は断ります。ドイステープまでの片道だけの場合、8人揃うまで待つか、4人(太郎を除く)が100Bずつ払うかどちらかだと言います。8人&times40B=320B。4人&times100B=400B。なんで高くなるねん。待つからいい、と答えます。ところが、10分ほど経っても新たな客が来る気配はありません。相談して、合計320Bまでなら払ってもよいということになりました。運ちゃんを呼んで交渉します。まだごちゃごちゃ言っていましたが、結局320Bで合意しました。相場よりは高めだと思います。だからこのおっちゃんにはチップはなし。ドイ・ステープまでは40分くらいでしょうか。市街を出るとすぐ山道に入り、結構な勾配がずっと続きます。トゥクトゥクで登るのは無理でしょう。途中、自転車で登っている白人グループを見かけましたがまぁご苦労なことです。車に弱い太郎が酔わないか心配でしたが、横になってうとうとしていたので大丈夫でした。山道に入ってからは周囲の植栽が市街地とは変わり、南国風というよりむしろ日本の山間部に近い印象を受けました。ただ、地質は少し違って石灰分を多く含んでいるようで、比較的急な斜面の法(のり)面も特に保護しなくても安定しているようでした。
ワット(寺の意味)・プラタートは車が行ける最高地点から、300段ほどの階段を登った上にあります。往復1人20Bで乗れるケーブルカーもあり、我々はそれを利用することにします。ソンテウに乗り合わせた2人は階段で行くというので、そこで別れました。ケーブルカー、と書きましたが、チケットにはエレベーターと書いてあり、斜めに上下するエレベーターというのが正確なところです。山の上からはチェンマイの市街が一望でき、チェンマイ国際空港も眼下に望むことができました。展望台で日本人のお姉さん達と再会し、一緒に記念写真を撮ります。
境内には、履物を脱いで裸足で入ります。タイの仏教はいわゆる小乗仏教で、寺院の造りも日本のものとはかなり違います。特徴的なのはきらびやかな金箔で、仏塔、屋根、仏像には常に金箔が重ねられ、美しい金色を保っています。寺や仏像が大好きな太郎は、神妙な顔で仏像群を見上げ、地元の人に倣って跪いて礼拝していました。タイ人の観光客も多く、髪型や服装がかなり前衛的というか何というか、一見ワルそうなお兄さんたちが大真面目にお祈りしている姿にこの国の仏教文化の奥深さを垣間見た気がしました。小さめのお堂の中でお坊さんが竹を振って水を掛けてくれた後、祝福の言葉(だと思う)と共に右手首に白い糸を結んでくれるところがあり、よく分からないまま我々3人もやってもらいました。太郎の順番のとき、お坊さんがニコニコしながら “Good boy, good boy, lucky.”と繰り返していました。また、中央部の仏塔の周りを人が花と線香を捧げ持って回っていたので、近くにいたガイドさんに聞くと花と線香を売っている場所と、3周回ったらいい、ということを教えてくれました。これも意味はよく分からないまま、他の人に倣って両手に捧げ持って3周回った後、花と線香を供えてきました。
ワット・プラタートの見学の後、一旦ホテルに帰ることにします。ソンテウ乗り場に溜っている車のほとんどはチャーターのようで、フリーの市内行きは1台しかいません。相乗りできそうな観光客は周りに見当たらず、太郎も疲れているようだったのでその1台をチャーターすることにしました。値段を聞くと、ホテルまでなら300Bとのこと。悪くはない気がしましたが、市内中心部の交通ハブで比較的ホテルに近いターペー門までなら幾らか聞いておきます。答えは250B。1車チャーターでドイ・ステープから市内まで250Bならかなり良い値段です。50Bあれば、ターペー門からホテルまでトゥクトゥクでも十分行けます。市内に入ってからの状況によってホテルまでの値段を改めて交渉するつもりで、とりあえずターペー門までということで交渉が成立しました。
目的地まではチャーターと思っていたのですが、市内に入ってからのルートは通常の市内循環ルートだったらしく途中2人ほど客を拾いました。市内は大体30Bの均一料金なので、60Bが運ちゃんのエキストラ収入となる訳です。更に、2人目の客の目的地はターペー門を過ぎて我々のホテル側に近付いた所のようでした。これに気を良くしたのか、運ちゃんの方からホテル前までプラス30B、合計280Bでどうかと持ちかけて来ました。こちらとしては願ってもない提案です。こうして、ホテルまで乗り換え無し、チップを入れて合計290Bで帰ることができました。
ホテルで一休みした後、市内観光に出かけます。ホテル前でトゥクトゥクに乗り、旧市街地である堀の内側にあるワット・プラ・シンに向かいます。この時のトゥクトゥクは、体格の良すぎる運ちゃんが重かったのか、エンジンがヘタっていたのか、多分両方だと思いますがかなりトロかったです。信号待ちで止まっている間何もしないとエンジンがストールしてしまうようで、ずっと空吹かししてましたがそれでも何度かエンストしてました。この運ちゃん、ワット・プラ・シンに到着するとこの後の市内観光の案内役を買って出ます。悪い人じゃないと思うけど、アンタのには乗らん。
ひとまず寺を出て近くの食堂でご飯を食べてから、ゆっくりと参拝します。それなりに有名な寺なのですが、観光客はあまりいませんでした。その後、ダウンタウンをしばらく散策し、買い物なんかもします。地図で見ると近くに博物館があったので行ってみましたが、残念ながら休館のようでした。かなり暑い日で、太郎も疲れぎみだったのでどこか涼しいところに行くことにします。旧市街を出て、空港の近くまで行くとエアポート・プラザというショッピングモールがあるのでそこに行くことにしました。
交通量の多そうな通りまで出て、トゥクトゥクを拾います。止まってくれたトゥクトゥクの運ちゃんと値段交渉。80Bと言われたのを、70Bに値切ります。この運ちゃん、先にも載せたこの写真ですが子供を連れてました。運転席の横(写真では手前側)に小さな席があり、客を乗せている間は子供はそこに座るようです。夏休みなので父ちゃんの仕事について来ているのでしょう。気のいい運ちゃん(相変わらず子連れは贔屓目に見てしまう)は英語もかなり達者で、色々と話し掛けてきます。例によって年齢を聞かれた太郎が「ハー!」と答えるとウケていました。一緒にいる男の子は8歳とのこと。太郎が前の席に身を乗り出して「え?ペー(タイ語で8)さいか?」などと話し掛けるとびっくりしながらも笑っていました。得意になった太郎が「ヌン、ソーン、サーム、…」と知っている限りのタイ語(数字だけ)を披露すると父ちゃん大ウケ。発音を直してくれたりしました。特に10(スィップ)の発音が悪かったらしく、「もっと舌を突き出して、歯で噛んで…」などと道端にトゥクトゥクを停めて熱心に教えてくれました。程なく到着。値切った10Bは元々チップで渡すつもりでしたが、せっかくなので子供にあげました。一瞬驚いた後、すごく嬉しそうに満面の笑みで受け取ってくれましたが、お釣りが足りなかった父ちゃんに取られてしまいました。「後でちゃんと渡す」と言ってましたが、どうだか。
ショッピングモールは日本のものと大差ありません。父の財布、母のバッグ、太郎のサンダル等を買いました。値段も日本とあまり変わらないようです。こういうものは、バンコクのほうが物も豊富で安い気がします。
買い物の後、店内の喫茶コーナーのようなところでジュースを飲みました。そこでデザートメニューに”taro bowl”というのがあるのを発見。早速注文します。写真のようなものですが、紫芋か何かが原料かな、という味でした。チェックの時に店員さんに何でできているのか聞いてみましたが、英語が通じず質問の意図を理解してもらえませんでした。
トゥクトゥクでホテルに帰った後、夕食に出かける前にシャワーを浴びてさっぱりします。チェンマイ最後の夕食は、7年前の時も含め何度も利用しているホテル正面の食堂です。店員さんも顔を覚えているようです。デザートには、しばらく食べられなくなるかもしれないマンゴーをたっぷり食べました。食事の後はこれも最後のナイトバザールに出かけます。
ところで、今回タイバーツの現金はバンコクの空港で240USDを両替しただけで、いくつかカードで買い物した以外は全てそこから出しています。前にタイに来た時は、再両替が必要ないように現金を使い切ろうとして計算を誤り、最後のほうで現金が足りなくなって撮ってもらった写真が買えなかったり、オプションツアー料金が払えずガイドさんに借金したりしました。他にも、Tシャツを買うのに散々値段交渉してようやく合意したところが手持ちが足りずにATMに走ったり、帰りの空港で空港利用税が払えずATMのお世話になったりもしました。当時は日本円の口座から現地のATMで現地通貨を引き出せるのはシティバンクくらいしかなく、市中の両替商より有利なレートで引き出せるというだけで嬉しがっていたのですが毎回手数料を引かれるのは同じなので両替の回数は少ないに越したことはありません。前回の教訓を踏まえ、最終日に必要な現金を空港利用税500B×3人分で1500B、ホテルから空港までのタクシーが200Bから300B、その他ちょっとした飲食もするとして合計2000B残しておくことにしました。タクシー用に小額紙幣も混ぜてこの金額を別の財布にキープしておきます。その上で、財布に残ったお金がこの晩に使い切ってもよい金額ということになります。
さて、バザールに繰り出したところで財布の中身はというと100Bとちょっと。大したことができるわけではありません。肩凝り症のたろ母は是非マッサージをしたいというので、これを優先します。料金は30分のコースで60B。太郎が竜の形のおもちゃを欲しがりますが、値札は300B。論外です。値切ってみると200Bくらいまでは負けてくれそうでしたが、どちらにしても予算オーバーです。ところが、財布に米ドルの端数が6ドルほど残っていたのでそれで交渉してみるとOKでした。6ドルの価値があるおもちゃかどうかは微妙(多分ない)ですが、まぁ許容範囲内でしょう。母がマッサージをしてもらっている間、太郎と2人でドライフルーツなどを見て回ります。色んな店で散々試食させて貰い、一番おじさんの愛想が良かった店で3袋を50Bで購入しました。マッサージが終わった母と最後に15Bでココナツミルクを買い、数Bを残してほぼ完全に使い切りました。マッサージはすごく気持ちよかったそうです。

最終日

いよいよ帰国です。早めに起きて荷物をまとめ、朝食を済ませます。部屋に戻ってちょっとくつろいだ後、3日間世話になった部屋に別れを告げます。ホテルの料金は出発前にWebで払い込んでいるのでチェックアウトの清算はありません。タクシーを呼んでもらい、空港に向かいます。タクシー料金は200B。妥当な金額です。空港に到着したのは、フライトの約2時間前でした。特にすることもないので、空港利用税を払ってさっさとチェックインしました。ところが、出発ロビーは閑散としています。出発2時間前にチェックインするのは日本人だけなのでしょうか。ヒマです。ふと見ると、奥の方にマッサージのブースがあります。料金は30分で200B。ナイトマーケットの3倍以上です。ま、当然といえば当然です。恐らくバンコクならもっと高いのでしょう。それにしても、日本円にすると700円程度なので十分な安さです。既に出国手続きも済ませ、今更ナイトマーケット価格と比較しても仕方ありません。せっかくだから、と勧め、たろ母はもう一度マッサージをしてもらいました。このマッサージは、高いだけあって本当にプロの技だったそうです。確かに、ナイトバザールではマッサージ師っていってもその辺のおばちゃんでした。
出発30分ほど前になると人も多くなってきます。バンコクまでのフライトは天気にも恵まれ、ほとんど揺れることもなく快適でした。バンコク国際空港に着陸し、誘導路をタキシングしている間に窓の外を見ると、2本の滑走路の間にある緑地帯がどうもゴルフコースになっているように見えます。広くてフラットな緑地なのでゴルフには確かにいい土地でしょう。しかし、普通は滑走路、誘導路などは空港施設の中でも部外者の立入りが最も厳しく制限されているエリアです。十分な離隔を取ってあるのだとは思いますが、すごくパワフルな下手くそが誘導路辺りまで転がしてしまうことはないのでしょうか。もう一度確認しましたが、確かにゴルフコースです。実際に人がプレーしていました。タイで感じた、一番大きなカルチャーショックです。
トランシット待ちの間に、免税店で職場や家族用のお土産を購入します。バーツの現金は使い切ったので支払いはクレジットカードです。タイ”らしい”お土産で職場に持って行けるようなものは思いつかなかったので、芸はないけどチョコレートを買いました。いくらしたのか覚えていませんが、既にタイの金銭感覚に慣れた我々にはびっくりするような、つまり日本と変わらないくらいの値段だったと思います。
バンコクから関空までのフライトもほとんど揺れませんでした。天候には恵まれていたようです。到着し、ウイングからターミナルビルに向かうシャトルを待っている間に何かが足りないのに気が付きました。バンコクで買ったチョコレートです。手提げの袋に入れてくれていたのを、そのまま飛行機に忘れていました。慌てて取りに戻ります。幸いまだゲートは開いていました。機内に着くとちょうど忘れもとのして関空の職員が受け取っているところでした。きわどいところで無事に返してもらい、改めてシャトルを待ちます。このハプニングのため我々は他の乗客からかなり遅れ、乗っていた飛行機の客室乗務員の人たちと同じシャトルに乗ることになりました。少し遅れてパイロットらしき人も走ってきましたが、同じシャトルには間に合いませんでした。
シャトルの車内で、太郎は正装の男性スチュワードが気になって仕方ないようすです。「あのひと、パイロットかな」というので、「聞いてみたら?」と促したのですが恥ずかしがってなかなか聞こうとしません。それでも勇気を出して歩み寄って、「パイロットですか?」と尋ねました。父が通訳してやると、パイロットは乗り遅れてしまったとのこと。太郎が「なんで?」とか何とか言っていると、そのスチュワードのおじさんは”You know what…”と言いながら制服の胸からバッチを外し、太郎の胸に着けてくれました。これは写真を撮らなければ、と思っていると、太郎の肩をたたいて”You can have it.”と言うではありませんか。本物のバッチをくれるというのです。太郎はもちろん大喜びです。得意満面で誇らしげに歩いていると、機内で我々の列を担当してくれていたスチュワーデスのお姉さんがそれを見て「これでいつでも飛行機に乗れるね」と言ってくれました。忘れ物をしなければこんなことは起こらなかったでしょう。何が幸いするか分からないものです。 入国審査もスムーズに済み、預けていた荷物もすぐに出てきました。真新しいパスポートのお陰か税関もフリーパス。到着ゲートを出て、車の引渡し場所に着いたのと車が入ってきたのがほぼ同時でした。ここまで待ち時間なく事が運ぶのも珍しいくらいです。着陸してから1時間とちょっとで家に帰り着いていました。

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