SkypeでSMS

投稿者: | 2006年10月5日

SMS(Short Message Service)というのは携帯電話同士で短い文字メッセージを送受信できるサービスで、日本と韓国を除く多くの国で一般的なGSM方式では事業者の違いを気にせずに電話番号のみでやり取りできる。日本ではDocomoのショートメール、Vodafone改めSoftbankのスカイメール、AU(KDDI)のCメールはそれぞれの事業者内では同様にメッセージのやり取りができるが、事業者を超えることはできない。その代わり、日本のPDC方式の携帯電話はEmailを扱えるので他社の携帯電話だけでなくパソコンで使うEmailのアカウントともメッセージの送受信ができる。添付ファイルも使えるので、写真や動画、着メロ等を送ることができる。GSM圏ではSMSを拡張して写真などのマルチメディアファイルを添付できるMMSというサービスがあって、やはり事業者を超えて通信できるのだが、電話番号で送るためパソコンとは普通には通信できない。どっちがいいかは場合によると思うが、ユーザーのわがままを言えばどっちもできて欲しい。
ちなみに、現在普及が進む第三世代(3G)でも全世界で仕様を標準化しようという試みはあるものの、現状ではW-CDMA方式とCDMA-2000方式に2分されている。いずれもIMT-2000規格に準拠しているが、互換性はない。IMT-2000規格準拠の拡張規格は全部で5つあるが、上記2規格以外では中国でIMT-TC(UTRA-TDD)のサービスがあるくらいで一般的ではない。海外ではアメリカと韓国ではCDMA-2000、ヨーロッパでW-CDMAが主流となっている。日本は両方あって、DocomoとSoftbankがW-CDMA、KDDIがCDMA-2000を採用している。
SMSの話に戻すと、第三世代の内少なくともW-CDMA方式についてはGSM方式と互換性があり、140バイト程度までのテキストメッセージなら事業者や通信方式を意識することなく電話番号で送ることができる。端末もW-CDMAとGSMの複数の周波数帯に対応しているものが多く、ローミングによって世界中の大多数のエリアで同じ番号で通話及びSMSの送受信ができる。日本でもW-CDMA方式を採るDocomoとSoftbankが海外とのSMS送受信をサポートしている。
日本では携帯メールといえばインターネットメールアドレス(xxxx@xx.xx)を使ったEmailが一般的で、電話番号で送受信する、添付ファイルも使えなければ文字数制限もあるSMSが使えなくても特に不便は感じない。むしろ、相手の携帯メールアドレスさえ知っていれば携帯電話のテンキーでちまちま入力することなく、パソコンを使って素早くメッセージを送れるというのはむちゃくちゃ便利である。ほとんどの大人がメール機能付きの携帯電話を持つようになった現在、リアルタイムなコミュニケーションインフラとしてはほぼ完成していると言っていいと思う。それが、今更ながらSMSなんぞを意識するようになったきっかけはVodafone(当時)から出ていたNokia製の端末に機種変更したことである。
フィンランドのNokiaと言えば世界の携帯電話市場でトップシェアを誇る通信機器業界の大御所だが、スタートは製紙工場でその後ゴム製品なども扱い、ゴム長靴で有名だったりしたことは意外と知られていない。時流に合わせ、かなり柔軟(無節操?)に事業内容を変えてきた会社である。それはさておき、私が手に入れたのは702NKⅡという端末で、Nokia6680というモデルのVodafone版カスタム端末だ。それまで国内メーカー製の端末しか使ったことがなかったので初めのうちは操作性の違いに戸惑ったが、今はすっかり気に入って今度変える時もNokiaにしようと思っている。
さてこのNokia6680だが、カスタマイズされていると言ってもファームウェアが日本語化されてVodafone(Softbank)のネットワークに最適化されているだけなので、「この機能は日本国内ではご利用になれません」なんてのがあったりする。これはそうではないのだが、掛かって来た電話に出られない時に電話を切った後、SMSを返すという機能が付いていた。日本人の普通の感覚としては、留守番電話で対応すりゃいいじゃん、と思うわけだ。実際に留守番電話も使えるのだが、例えば「会議中です。後でこちらから連絡します」といったメッセージをSMSで送ることができるのだ。国内ではこれを使うにも、相手が同じ事業者(Softbank)の携帯の場合にしか送れないのであまり意味がない。標準仕様のGSM圏ならではの発想だと妙に納得した。もっとも、GSM圏にしたところで相手が固定電話だと使えないし、留守番電話でも同じことは可能だ。だからこの機能については使えなくても全く困らないのだが、相手が携帯電話でさえあれば何も考えずに簡単なテキストメッセージが送れるというのは意外に便利かもしれないと気付いた、これが最初のきっかけである。

話は変わって、最近仕事でオランダと連絡を取ることがたまにある。普段はメール(当然Email)で済ますのだが、急ぎの場合は電話をかけることもある。時差の関係でお互いの就業時間がラップするのはこちらの終業間際の数時間だけなので、そこを狙って電話をかけるのだ。先日、どうしても当日中に確認しなければならないことがあった。メールを送っておいて、相手の始業時間を待って電話をかけてみたが繋がらない。会社の電話なのだがダイヤルインで直通になっているらしく、数回のコールの後留守番電話(メッセージは本人の声)になってしまう。オランダは普通に英語が通じるので、誰か他の人が電話を取ってくれさえすれば本人への連絡手段を聞くなり他の人に取り次いでもらうなりできる。ところが留守番電話のメッセージはオランダ語のみで、席を外しているだけなのか休みなのかも分からない。メールに携帯電話の番号も書いてあったのでそちらにも掛けてみたが、今度は機械音声の留守番電話に繋がってしまう。途方に暮れていた時、ふとSMSを送ることを思いついた。
オランダを含め、ヨーロッパはGSM圏である。3GのサービスがあるとしてもW-CDMA方式のはずだからSMSは通るはずだ。そしてSoftbankの3Gは国際ローミングサービスを売りの一つにしているくらいだから、海外にSMSを送ることもできるだろう。調べてみると、やはりできるようだ。ただし日本から海外へのSMS送信は1通あたり100円ほどかかるらしい。大した額じゃないかもしれないが、仕事のために自腹を切るのは気が引ける。そこで、Skypeを使うことを思いついた。バージョン2.5から携帯電話へのSMS送信ができるようになっているのだ。送信にはSkypeOutの料金がかかるが、調べてみるとオランダへは1メッセージあたり0.1ユーロである。このところユーロ高傾向だが、まあ15円程度である。これなら許容範囲だ。100円だと私の許容範囲を超えているのだ。
早速メッセージを送ってみる。その前に電話しておいて言うのも何だが、SMSならもし相手が休暇中とかでもそれ程気にしなくていいだろう。文面は一応そういう可能性も考慮して、もし見れたらメールを見てね、という感じにした。発信者情報は自分の携帯電話番号にしておく。果たして、数分後に私の携帯電話にSMS着信があった。+31(オランダの国番号)から始まる彼の携帯電話からのメッセージである。「今マドリードにいる。メールは見れないから携帯に電話してくれ」とのこと。海外出張中でしたか。お言葉に甘えて改めて携帯電話に電話して(当然会社の電話から)、無事に用件を済ますことができたのだった。EU域内での国際ローミングサービスは昔から当たり前にあるのだろうが、どこにいても連絡がつくというのは何とも便利なものである。相手にとっては面倒なだけかもしれないが。ごめんよ、某オランダの人。でも本当に助かった。

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