去年の今頃、太郎に発達障害の疑いがあるということで色々悩んだりしていました。今年度に入って専門医を受診し、発達障害ではないとのお墨付きをもらって一安心しましたが、他の子に比べてボーっとしたところがあるのは事実です。ところで、発達障害、もしくはその傾向のある太郎のような子供を持つ親の悩みとして学校の担任の先生の不理解というのをよく耳にします。「○年教師をやってるけどこんな子は初めて」という感じの事を言われたというのもよく聞きます。今回は、事の是非はさて置いて純粋に数学的にその可能性を考えてみましょう。
どこまでを発達障害に含めるかで結果は変わってきますが、今回は簡単のため発症率を1%とします。ちなみに、これはAD/HDの学童期までの発症率とされる数字の一番低いほうです。1クラスの人数を30人とすると、クラスに1人も対象者がいない可能性は1-0.99^30で73.97%となります。簡単のため少し大目の75%(3/4)とすると、初年度で少なくとも1人の対象者に出会う確立は25%、2年目に初めて出会う確立は約19%、3年目14%、4年目11%、5年目8%となり、初めて出会うまでの年数の期待値は4年になります。では、ある年数経って1人も対象者に会わない可能性を考えて見ましょう。1年やって1人も対象者に会わない確立は75%、2年では56%、3年では42%、5年で24%、8年で10%、11年で4%、16年で1%、20年で0.3%となります。こうしてみると、この前提の発症率とクラスの人数、かつ毎年ランダムにクラス替えをするという条件の下では、キャリア3年くらいの先生が「こんな子は初めて」というのはまぁあり得る(それでも半分以下の確立)けど、5年やってる人ならちょっと珍しい、8年ならかなり稀、16年では相当珍しい、20年以上ならほぼあり得ないということになります。
確率論というのは、ある事象が期間中に少なくとも1回起こる可能性といった場合は直感的に捉えるのが難しいので注意が必要です。200年に1度の地震というのは、ある1年間に起こる可能性が1/200ということであって、今後200年のうちに少なくとも1回起こる確率は半々よりかなり多くて63.3%もあります。商業用原子炉が炉心損傷に至る事故を起こす確立はIAEAの目標値で1炉1年あたり10万分の1というとんでもなく低い確率に思えますが、これは世界中に500炉あるとして、今後100年以内に少なくとも1回炉心損傷に至る事故が起きる確立が約40%という値です。この駄文を書くために計算してみて自分でも驚きました。
それにしても、こういうちょっとした疑問をすぐに計算できるExcelって便利ですね。
(※)太郎の昨年度の担任の先生はキャリア20年以上のベテランでした。