事故米パニック

投稿者: | 2008年9月12日

2008年9月現在、カビや残留農薬が基準値を超えて食用に適さない所謂事故米をある業者が食用に転用していたことが明らかになり、ちょっとしたパニックになっています。食の安全性を揺るがす、この業者のモラルの欠如した行為はもとより、何度も検査に入っていながら不正を見抜けなかった農水省の体制も厳しく批判されるべきである。
それはさて置き、いたずらに不安を煽るようなメディアの無責任な報道には相変わらず違和感(むしろ怒りか)を覚える。危険だ、怖いと騒ぎ立てるのではなく、どういうリスクがどの程度あるのかを冷静に正しく伝えるのがマスメディアのあるべき姿なんじゃなかろうか。
一部では、カビに由来するアフラトキシンの強い発癌性をことさら強調し、これが原因で肝臓癌が増えているといった主張を無批判に紹介しているものまである。アフラトキシンが人の肝癌発症のリスクとなるのは事実だが、今回問題になっている事故米が原因で統計的に有意なデータが出ることはあり得ない。このことは、疫学的な推定値と事故米穀の流通量や検出された濃度などの発表データから計算できる。もちろん、これは事故米の流用が健康に与える影響が無視できるということではないし、仮に閾値があって今回の流用ではその値未満であったとしても将来にわたって影響がないとは言い切れない。重ねて言うが、実際の健康被害の大小に係わらず問題の業者並びに監督省庁の責任が厳しく追及されるべきであることは当然である。
ただし、多くの人目に触れる報道で「あなたも食べてしまったかもしれない米で癌になる危険があります」とだけしか言わず、「そのリスクは10万人に対して年間0.01人が発症する程度です(B型、C型肝炎キャリアの場合は約30倍)」という事を伝えないのは誠実さに欠けると思う。
我々としては、印象だけの薄っぺらい報道に流されることなく、定量的なデータに基づく科学的な分析と科学っぽいだけの疑似科学をしっかり見極める目を養わなきゃいけない。

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