本体の方でチラっと新しい携帯電話を買ったと書いたが、せっかくなのでここで自慢しておこう。我が家は家族全員にばあちゃんまで加えてSoftbankを利用している。今まで使っていた端末はVodafone時代のNokiaの端末だ。今回もNokiaを買ったのだが、Softbankからではなく海外通販で買った。
日本では携帯電話端末は作っているメーカーではなく携帯電話事業者が販売するのが普通で、キャリアのショップで買っても量販店で買っても「docomoの」端末であったり「Softbankの」端末だったりするのはそのためである。海外ではもう少し端末とキャリアの縛りが緩いことが多く、一定の条件を満たせば好きな端末を買ってきて好きなキャリアで使うことも可能だったりする。例えば、家電量販店で「東芝」なり「シャープ」なりの端末を買って、docomoなりauなり好きな事業者と契約して使うという感じだ。固定電話とかケーブルテレビとかと同じである。
日本では最初からキャリアが端末を売るやり方しかなかったので、端末は各キャリア専用に開発されていて、どのキャリアでも使えるような端末は作られていない。現在主流の第3世代(3G)ではauだけ電波方式が違うのだがdocomo、Softbank、e-mobileは同じ方式だ。この3社についてはどのキャリアでも使えるような端末を開発するのは簡単なはずだが、各社の囲い込み戦略とか色々な大人の事情でメーカーも好きにはできないようである。
ところがNokia(フィンランド)を初めSamsung(韓国)にしろMotorola(アメリカ)にしろ海外のメーカーはそんな大人の事情は関係ないので、スケールメリットに物を言わせて世界中で同じモデルを売って開発コストを抑えている。
利用者にしても、これだけ携帯電話が普及してかつグローバル化が進めば世界中どこにいても同じ電話番号で同じ端末が使えるというメリットは非常に大きいので、各国の携帯事業者はなるべく国際標準の技術を採用するようにしている。日本の携帯電話システムは長らく国際標準と違う方式で独自の進化をしてきて、「ガラパゴス」などと言われたりもしているが3Gからは少なくとも電波方式は国際標準に合わせるようになった。それに伴い海外メーカーも最小限の変更で参入できるようになり、docomoやSoftbankで少しずつだが発売されている。auは3G移行が他社よりも早かったのだが、選択した方式が国際標準ながら採用が北米と韓国以外に広がらず、しかも周波数を合わせなかったため国際化という点では大きく出遅れることになった。
長々と引っ張ったが、今回購入したのはNokiaのN78という端末である。ヨーロッパで発売されてからまだ1年も経っていない比較的新しい機種だ。今世の中に存在する携帯電話に搭載されているもののうち、私が欲しいと思うものは全て入っている。それでいて今まで使っていたNokia6680(Softbankでの名前は702NKII)よりもコンパクトだ。4年前のモデルと比べたら何でも進化していて当然だが、画面も綺麗だしカメラもAF付きだし無線LANもGPSも付いてるしとても満足している。わーいわーい。
Softbankからも冬モデルでNokiaの機種が出るらしいのだが、N78はどうやら候補に入っていないらしいのと、Softbank以外で使えないようにロックされる割に大して安くなりそうにないので待たずに買っちゃったのだ。Softbank版だったら日本語関係とかメールの設定なんかは苦労がないのだが、そこは先人の知恵を頼りに自分で頑張ることにした。
Vodafoneの遺産か、国内キャリアの中では最も国際標準に対してオープンなSoftbankだが、それでもまだガラパゴスの名残がある。例えば、MMSといういわゆる携帯メールの設定がオープンになっていない。海外ではローミングでネットワークに繋ぐと自動的に設定がダウンロードされるのが普通である。海外でも何もせずに写メールとかが使えるのはそのお陰なのだが、逆に海外からSoftbankにローミングする人は写真を添付したメールはできないようだ。また、いわゆる公式サイトに接続するのもSoftbankが発売した端末からしかできないようにしている。これでもdocomoに比べるとずいぶん自由度が高いのだが。
さて、私が買ったのはアメリカの業者からだが、商品の発送は香港からで届いた端末のファームウェアはフィリピン語版だった。中国語版だとそのままでも日本語の表示がある程度できるそうなのだが、カタカナが足りなかったりするのでどっちにしてもフォントの追加は必要だ。折角なので絵文字入り(モノクロだけど)のフォントを拾ってきてインストールした。自分では絵文字なんてまず使うことはないのだが、太郎が送ってくるメールは絵文字だらけだし、他の大人(オッサン含む)からのメールも絵文字が入っていることがあるので表示はできた方が無難だ。日本語入力については前のNokia6680ではATOKが入っていてとても使いやすかったのだが、残念ながらこのOS用のATOKは単体では売っていないので代わりに松茸というソフトを購入した。
ここまでは大した苦労もなく設定できたのだが、メールとWebの設定は少しばかり苦労した。電話番号でやり取りするテキストメッセージのSMSについては特に設定しなくても使えるので問題ない。私はほとんどこれしか使わないのだが、たまには写真とか動画とかを添付したいこともあるかもしれないし、docomoとかauとかに送ることもあるかもしれないし、受信は自動でしたいのでMMSは欲しいのだ。Softbankは基本的にSoftbankから出した機種にしかMMSを使わせない方針のようで、設定が非公開なだけでなくサーバー側で端末情報を見て弾いているそうだ。何故か関西地方では端末情報でのフィルタはかけていないので設定さえ手動でしてしまえば関西にいる限り使えるのだが、出張中に使えないのも不便なので何とかしたいところである。Softbankから出したものではない端末をSoftbankのネットワークで使うユーザーというのは、つまり販売奨励金なしで端末を調達して他のユーザーと同じ料金を払ってくれている有難いユーザーのはずで、それを除外するのに何ら経営的合理性はないのだが、Vodafone時代の3G移行初期に海外製端末に起因するネットワークトラブルが頻発し、その名残のようだ。尚、規約でもサードパーティ製端末の使用は禁じられていない。基地局のソフトウェア的なバグなんてとっくに修正されてるんだからさっさと解禁してもらいたいものである。
キャリアの事情はともかく、日本語や各種設定で不自由な思いをしてでも国内でNokiaの端末を利用したいという人は結構たくさんいるようで、そういうガジェットマニアっぽいオタクは技術オタクであることも多く、そうした先人たちによって色んな解決策が考えられてきた。MMSの設定にしてもかなり情報が出揃っているので、それらに従ってやればうまく行くはずである。基本的にはプロキシを使って端末情報を書き換えるだけなのだが、私は少し欲張って実績のある端末情報よりは新しい端末情報にしようとしてつまずいた。出回っている端末情報はNokia6630という、これまで使っていた6680よりも前にVodafoneから出していたNokia端末の情報で、さすがにかなり古い機種なので将来的に何らかのサービスが利用できなくなる可能性があると考えたのだ。別途、N73という、Softbankになってから705NKという名前で出したNokia端末の情報を見つけたので、同じNシリーズで新しいこちらを使うことにしたのだ。設定ファイルを色々書き換えて何度も端末を再起動したり、苦労はしたが最終的にはうまく行った。
現在、メニューが英語しかない(フィリピン語にもできるけど)のと、絵文字がモノクロで動きもないのと、日本語の変換がATOKほど賢くない(これが一番困る)以外は前の機種でできていたことは全てできるようになっている。新たにできるようになったことは数知れず。シャープや東芝も悪いとは言わないけど、Nokiaの自由度を経験した後ではもう戻る気が起きない。誰にでもお勧めできる端末じゃないけど、PCにOSをいくつも入れるような人なら買って後悔はしないと思う。
ところで、父が携帯電話を新しくしたのを知った太郎は、まず不安そうな顔で「お父さん、前の青いケータイ(Nokia6680)、すてたん?」と聞いてきた。ちゃんと置いてあることを伝えると今度は期待を膨らませているのを何とか抑えた微妙な表情で「ぼく、もらえるん?」ときた。この新しいもん好きめ。小学生がNokiaなど10年早いわ。コドモバイル使っとけ。まだ割賦も残ってるし。とりあえず、「大きくなったらね」と言っておいた。
(追記)
Nokiaは発売済みの機種についてもある程度の期間ファームウェアのバージョンアップをしており、ネットワーク経由で比較的観点に新しいファームウェアを入れられるようになっている。たまに対応言語が追加されたりもするのだが、日本市場から撤退してしまった以上日本語が追加されることはないと思っていた。ところが、日本語ファームウェアが出ちゃったのである。早速導入したところ、漢字変換は予測変換付きのATOKになってるし、アニメーションGIFの絵文字もちゃんと表示(入力も)できるし、電話帳は名前の読み(フリガナ)でインクリメンタルサーチできるようになってるし、不便なところは全部改善されてしまった。Nokiaグッジョブ。しかも、音声認識とか読み上げとかいう何に使うのかよく分からなかった部分も日本語対応になっていたようで、電話帳に登録された番号から着信すると着信音の合間に名前を読み上げてくれるようになった。この機能はオフにもできるけど、面白いのでそのまま使っている。意外と便利なんだな、これが。