先日、会社でプレゼンテーション研修なるものを受けたのですが、これを担当した外部委託の講師が全くもってダメダメだったのでここにこっそりと書いておきます。
この研修は全社教育の一環で、他にもプロジェクト管理だとかコーチングだとか色々あるシリーズ物の一つで比較的若手の社員が今回の対象に選ばれているようでした。会社の会議室を使って9時から5時まで、みっちり丸一日のプログラムです。某電力系人材会社から派遣されていた講師の先生1人に対し、受講生は十数人でした。
ダメダメその1は資料です。研修に使うPowerPointのスライドがそのまま配布資料として配られていましたが、特に際立った特徴はないものの流石に無難に見やすい資料になっています。ただ、そこかしこに明らかにどっかから流用している写真や意匠デザインが使われており、出典は一切示されていません。受講生の1人が事前課題で作ってきたプレゼン資料の中で使っている写真の出典を一覧にして付けているのに対して「ボクはわりと適当に使っちゃうんですよ」とか言ってましたが、適当じゃイカンだろ。しかも客先で使う商売道具なのに。
ダメダメその2、メラビアンの法則。就職(転職)支援とか営業系とかのコンサルタントが好んで使うネタで、コミュニケーションにおいて相手に与える印象の55%は見た目や態度、身振り手振りなどで決まり、声の大きさや話し方が38%、話の中身は僅か7%しか伝わらない、というものです。よく目にする話ですが、今回の研修でもしっかりとスライド1枚使って説明されていました。これ、完全に間違いです。ちょっと検索すればいくらでも情報が出てくるので詳しくは書きませんが、メラビアンが行った実験は全く趣旨の違うもので、対人コミュニケーション一般に当てはまるものでないことはメラビアン本人が明言しています。本当にちょっと検索するだけですぐに確認できることなのに、恥ずかしげもなく間違った解釈を堂々と載せているページもあって、今回の先生もこうした間違った情報を確認もせず流用しているのでしょう。こんなところも適当です。ダメじゃん。
他にも、「知ってますよね。え?知りませんか?」とか言いながら出してきたMECEとかいう略語が何の略か説明できず、「忘れました。検索してください」と仰るので昼休みに検索してみたら”Mutually Exclusive and Collectively Exhaustive”の略だということが分かったけど、先生の用法は明らかに間違っていたり、とにかく自分が喋る内容について裏付けが足りていないと感じました。
また、ご本人は「文系」らしく、今回の受講者の大半である「理系」の人たちは色々違っていて面白いそうですが、「文系」「理系」のステレオタイプで分類するのは少なくともたろ父の周りの技術系の人の間では一般的ではありません。尚、技術系のプレゼンテーションでは見た目のインパクトよりも内容の正確さが求められることも多く、その意味では明らかに営業系を意識した今回の研修はスコープがずれていると言えるでしょう。研修対象者の職種構成なんて事前に問い合わせれば簡単に分かると思いますが、そこはあまり気にしていないようです。
プレゼンを聴く側の態度として、腕組みをするというのは否定的な態度と取られやすいので注意しましょう、みたいな話があり、よっぽどこれ見よがしに腕組みをしてやろうかと思いましたが大人なので我慢しました。自費で受講している講習なら迷わずやったと思います。後日人事担当者に提出した報告書では、しっかり批判しておきました。