無線データ通信

投稿者: | 2010年6月11日

ApppleのiPhone4が発表され、たろ母がとても乗り気なので発売日に購入することになりそうです。iPhoneは正に革新的なデバイスで、スマートフォンの裾野を一気に拡げた功績は大きいと思います。少し前までスマートフォンと言えば外資系企業がBlackBerryを導入したり、一部マニア(含たろ父)がNokia等の海外端末を使っていたりする程度でした。それが今や、電車の中や駅のホームで誰かがiPhoneを弄っているのは日常の風景になりました。iPhone以外にも各社が複数のスマートフォンを販売し、もはやスマートフォンは一部マニアだけのものではなくなりつつあります。
スマートフォンと日本の一般的なケータイの使い勝手はかなり違う部分もあり、これまでなかなか普及しなかった原因の一部もここにあります。中でも大きく違うのがWebアクセスで、一般的なケータイでは低速な通信回線と小さな画面に最適化したブラウザとコンテンツを利用します。一方スマートフォンは無線LAN等より高速なネットワークを利用でき、処理能力が高かったり画面が大きかったりするので基本的にはPC用のコンテンツをそのまま利用できます。
ただ、全てのスマートフォンがiPhoneのように高速なブラウザと大きな画面を備えているわけではなく、通信回線の方も高速規格であるHSDPAを利用できるエリアはまだまだ限られています。外出先でも自宅のPCと同じようにリッチコンテンツをじっくりと楽しみたい、という需要もあるのでしょうが、素早く必要な情報を得たいという実用目的では今のところケータイブラウザに分があります。
実はこれはおかしな話で、本来であれば目的に応じて利用者がコンテンツを選べて然るべきです。スマートフォンを持っているのなら、例えば会議の合間や移動中に急いで新幹線や飛行機の予約を変更する場合はケータイサイト、動画を含むニュースを観るならPCサイトという具合にサイトを選ぶだけなので、ユーザー側にもサイトの運営側にも何の手間もかかりません。現状でこれができないのは、いわゆるケータイサイトを用意しているサイトが専用のURLを設定せずに、PC用と同じURLで接続回線から判断して勝手に接続先を変えているからです。
携帯電話でのデータ通信はかなりの部分が自宅での利用だそうです。皆が皆PCを持っているわけではないし、持っていたとしてもわざわざ起動しなければいけないPCより手元にあっていつも電源が入っている携帯電話の方が便利な場面も多いのでしょう。ところが、せっかく有線のインターネット回線のある自宅からわざわざ遠くの基地局まで余計なエネルギーを使って無線通信するというのはいかにも無駄です。最近のスマートフォンは大抵無線LANが使えるし、普通の携帯電話でも無線LANを搭載した機種が増えています。無線LANは無線という点で使い勝手は無線通信回線と変わらない上、通信距離が遙かに短いのでより少ないエネルギーで高速に通信できます。今や携帯電話に無線LANのチップを載せるのはスペース的にもコスト的にもほとんど影響がなくなりました。スマートフォンだけでなく全ての携帯端末に無線LANチップを搭載すれば問題は解決されるように思います。
ところが、これがそうはいかないのです。無線LAN経由の通信は速度は速いものの、現状のシステムでは携帯専用のサイトではなく強制的にPC用のサイトに誘導されるため、PCに比べて貧弱なCPUと小さな画面では非常に使い勝手が悪いのです。携帯用サイトを別URLにし、接続元で勝手に振り分けるのを止めるだけで、サイト運営側は余計な処理をせずに済み、ユーザーはパケット代を抑えつつ高速通信でいつものコンテンツを楽しめ、通信事業者は回線の逼迫を避けることができるのです。誰も損をしません。
今まではスマートフォンのような携帯用デバイスで無線LAN経由でケータイサイトを利用したいという需要自体がほとんど無かったために見過ごされてきたのでしょうが、iPhoneを始めスマートフォンユーザーが増え、関係者が現状のバカバカしさに気付いて少しずつ改善されていくことを切に望みます。

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