アメリカが、オバマ政権になって初の臨界前核実験をやりましたね。今までは事前に通告してたのが今回はそれもなくて事後報告だったこともあり、透明性が下がった感は否めず、そこは残念です。
ところで、英語ではsubcritical testingとかsubcritical experimentと言って、省略する場合はSCEsなんて表記をよく見かけるんですが、”nuclear”は入ってないんですね。nuclearを加えた表記がないわけじゃないけど、一般的じゃありません。
日本語の語感からは核爆発までは至らないまでもその直前まで核反応を起こす実験のように思えるし、実際私もそう思っていました。今回英語圏のニュースを巡回していて疑問に思い、調べてみると、どうやらそうではないようです。核弾頭に使うプルトニウムの中には半減期が15年足らずのものもあり、古くなると当然特性が変わります。過去の膨大な実験データがあるので核分裂反応そのものは実際に起こさなくてもシミュレーションで計算できるのですが、起爆剤の爆縮によるエネルギーを知るため、圧縮などの物性を測っているのです。つまり、プルトニウムなどの核物質は使うものの「核実験」と呼ぶのは不正確です。核兵器に関わる実験には違いありませんが、プログラムの試験や構造材料の強度試験といったものに近い印象です。
核兵器の削減、そして将来的な廃絶に向けて知恵を出し合って努力すべきなのは当然ですが、現時点でアメリカだけが一方的に核兵器を廃止するのは現実的じゃないでしょう。まだある程度の期間は核兵器を運用することを認めるのであれば、その安全性と信頼性を維持するための技術開発に反発するのは合理的ではありません。核武装の強化を目的とした開発や実験とははっきりと分けて考えるべきだと思います。
「核」と聞けば何でもかんでもとにかく反対するという気持ちも理解はできるのですが、その意味を深く考えずに感情的に意思決定してしまうのは最終的なゴールから遠ざかってしまう結果にもなりかねません。何についても、意味をよく考えることを心がけたいものです。