ヨーロッパに住んでた頃の昔話も何度かしてるけど、何せ10年前ともなると記憶も怪しくなってきて、所々嘘も混じったりしてると思います。ともかく、今回は北欧でのカルチャーショックについて。
たろ父がとあるNGOに参加してデンマークに渡ったのは23歳の時でした。それまで海外といえば、高校生の夏休みにアメリカの姉妹都市(オレゴン州の片田舎)に行ったことがあるだけで、特に英語が得意なわけでもなく、情報収集も今みたいに簡単ではなかったのでとにかく知らないことだらけでした。
同じプログラムに参加していた人達は日本でいう高校を出たばかりくらいの若い人達が多く、半分くらいは地元デンマーク人で、外国人もほとんどがヨーロッパの、鉄道で往き来できるエリアの出身でした。たろ父は日本で過去にその団体で働いていた日本人に会って説明を受け、何度か手紙とFaxをやり取りして参加を決めたのですが、プログラムの細かいところはちゃんと理解しないまま参加していました。一方他の参加者たちは例外なく事前に施設(学校)を訪れて見学し、実際のプログラムも体験したりしていました。言葉のハンディ以外に、最初からかなり情報格差があったわけです。
たろ父はちゃらんぽらんな性格ですがちょっとはまじめなところもあるので、郷に入っては郷に従おうと努力はしてみました。ただ、どうしても「浮いて」しまうのは避けられないということに気付いて、周りと全く同じように振る舞おうとするのは早々にあきらめてしまいました。割り切ってしまえば気も楽になり、日本でもおかしいだろうということまで「いやーすいませんね、何せ極東の端っこから来た田舎者でして」とごまかせる図太さがいつの間にか身に付いていました。
もっとも、頼まれたり誘われたりしたのをはっきりと断れるようになるまでは2ヶ月くらいかかったように思います。特に理由なく断って相手が気を悪くしたとしても一時のことなので何も後ろめたく感じる必要はないのですが、分かっていてもなかなかできないのはやっぱり小心者だからでしょうか。中には悪事に誘ってくるヤツもいて、初めのうちは間の取り方が分からず後から後悔したこともありました。たいした悪事じゃないですけどね。
初めの2ヶ月くらいはとにかくカルチャーショックの連続だったんですが、一度慣れてしまうと逆にそっちが当たり前になって、何がそんなに違和感があったのか分からなくなることも多かったりします。色々びっくりしたな、とは覚えているのですが、いざ書こうとすると何にびっくりしていたのか意外に覚えてないんです。一つ覚えているのは女の子の服装ですね。健康な若い(当時)男ですので、異性は気になります。ファッションとかは興味ないのですが、ブラジャーの肩紐が見えているとかそういうしょうもない事に反応するわけです。共同生活をしている仲間内なので一般的にどうかは分かりませんが、下着が見えるくらいは女性の皆さんもあまり気にしないようで、ちょっと着替えるくらいは目の前でも平気でやってました。住んでいた寮はシャワーのない部屋が多く、2部屋に1つくらいの割合で供用のシャワールームがありました。シャワールームにも脱衣スペースはあるのに、面倒なのか皆自分の部屋で全部脱いでバスタオル1枚でシャワーに行くんですね。男も女も。共同なので先に誰かが使ってることもあって、その場合その格好のまま廊下で待ってるわけです。すぐに慣れましたが、最初に見たときはびっくりしました。
逆に最後まで馴染めなかったのは、食べ物を簡単に捨てることです。バイキング料理というのは日本だけの言い方だそうですが、共同生活と言うこともあり食事は全て各自が取りたいだけ取り分けるビュッフェ形式でした。なのに、自分で取ったものを食べ残して簡単に捨てるんですね。だったら少なめに取れと。取った以上は残さず食べろと。文化の違いなので仕方ないのですが、日本人であることを誇りに思いつつ、取った食べ物は捨てないというのを最後まで貫き通しました。誰も気付いてないと思いますけど。
はじめびっくりして、すぐに慣れるという経験を繰り返すうちに、はじめからあまりびっくりしなくなりました。そのおかげか、アフリカに赴任した当初、ヨーロッパ人のチームメイトが初めて経験するカルチャーショックに戸惑う中でたろ父は比較的すぐに馴染むことができました。カルチャーショックの予行演習ができていたんですね。食文化などはむしろアフリカの方がアジアと近い部分もあり、アフリカでは生活に関しては文化の違いで戸惑うことは少なかったように思います。仕事では戸惑いまくりでしたけど。
北欧に戻すと、他に覚えているのは容器や袋がきっちり規格化されていたことです。牛乳パックなんかのテトラパックがスウェーデンの会社だということは後で知りましたが、色んな物がメーカー問わず統一された規格に従っていることで輸送用のコンテナなんかも統一できて、効率がいいわけです。ゴミ袋も然り。共同生活なので食材の買い出しもゴミ出しも大量なんですが、ゴミ袋も規格品なのでコンテナ類もぴったりサイズの物がどこでも手に入り、非常に便利だと思いました。オープンな規格を推奨する文化があるのかただ単に特定企業による寡占の結果なのか知りませんが、消費者にとっても社会全体にとっても有益でしょう。