土曜日(8/6)の早朝、タリバンのRPGによる攻撃で墜落し、30名の米兵(ビンラディン暗殺を実行した海軍精鋭シールズ隊員22名を含む)と8名のアフガン兵が犠牲となったチヌーク・ヘリコプターは毎晩のように行われているアフガニスタンでの特殊部隊による作戦の危険性を浮き彫りにした。またタリバンにとっては、カブールにほど近いTangi渓谷でアルカイダ指導者の殺害に対する報復として米軍ヘリを撃墜した、と発表できたことは恰好のプロパガンダとなった。しかしながら、アメリカにとっては1作戦での損失としては10年近く前に戦争が始まって以来の惨事となったにもかかわらず、この事件に戦略的な重要性を見出そうとするのは筋が悪い。
バラク・オバマによる拙速な兵力削減が勢いを増すにつれ、特殊部隊の作戦のテンポは緩むどころか勢いを増すと思われる。その理由の一つは、夜ごとに狙われている反乱軍の中堅、上級指導者に対して圧力をかけ続けることが、彼らを交渉の席に着かせるのに最も有効だと考えられていることだ。さらに、通常部隊の戦力配置が薄くなるにつれ、戦力の補完や危険な状況からの救出に特殊部隊が派遣される機会も増える。ペンタゴンの上級職員が最近ニューヨークマガジンに語ったところによると、過去2年間に特殊部隊による目標攻撃(暗殺)は約2000回実行されているが、奇襲であること、兵士の能力、圧倒的な火力によって、ほとんどの場合はNATOおよびアフガン陸軍には損害なしか、軽微な損害しか出ていない。
本質的に、敵地でのヘリコプターによる部隊空輸を含む作戦は危険である。ヘリコプターはアフガニスタンの紛争地帯を移動する手段としては車輌による道路移動よりもはるかに安全ではあるが、信頼性は低く、敵の攻撃がなくても故障したり墜落したりすることもある。今年に入ってアフガンでヘリコプターの墜落と緊急着陸は15件起こっているが、そのうち敵の攻撃によるものは先週末のチヌークを含め2件だけである。またヘリコプターは、離着陸の数分間は特に脆弱となる。特にチヌークはベトナム戦争時代の鈍重な機体であり、大きく狙いやすいターゲットとなる。
アフガニスタンのNATO軍にとって幸いなことに、タリバンは1980年代にアメリカがムジャーヒディーン戦士たちに大量に供与したスティンガーミサイルのような、近代的で携帯可能な地対空ミサイルを持っていない。熱源追尾式で5マイルの射程を持ち、高度12,500フィートの航空機を攻撃できるスティンガーミサイルのために、ソ連軍は優勢や航空戦力、特にヘリコプターを使うのが非常に困難となった。1989年に纏められたアメリカ陸軍の研究によれば、スティンガーミサイルは269機を撃墜し、撃墜率は79%に上った。この数字には異論もあるが、スティンガーミサイルの供与が戦争の終結に決定的な影響を与えたと考える人は多い。
ソ連がアフガニスタンから撤退すると、アメリカは55百万ドルを投じて配布した300からのスティンガーミサイルを買い戻した。全てを回収することはできなかったが、1990年代半ばにはバッテリーが切れているので現在では稼働可能なものは残っていない。
タリバンがNATOのヘリコプターを攻撃するのに自動ライフルとRPGしか持っていない限り、よほどのラッキーショットがなければ大した損害はなく、これまで通り作戦は続けられるだろう。しかしながらもしこの状況が変われば、既に十分困難な任務はさらに危険なものとなる。
http://www.economist.com/blogs/clausewitz/2011/08/war-afghanistan