貧乏人のパリ旅行

投稿者: | 2012年4月17日

出張でパリに行ったときのケチケチ生活については書いたことがあるけど、今回はそんなモノとは比べものにならないくらいのケチケチ旅行記を紹介しよう。たろ父が初めてヨーロッパを訪れ、まだ慣れない一人旅をしていた頃の話だ。

建設現場の仕事で知り合った不思議な日本人がいて、1年の半分は日本で日雇いみたいな仕事をして、残りの半分はフランスとスウェーデンで過ごすという人だった。高校を出てからフランスに留学し、北欧文学だか何だかを勉強して、どういう仕組みか知らないけどずっと大学に在学したままになっていたらしい。そんなに仲が良かったわけじゃないけど、パリにアパルトマンを持っているとのことだったので、せっかくなので遊びに行くことにしたのだ。目標は、とにかく金を掛けないことだった。

旅のスタートはスウェーデンのストックホルムである。その時のストックホルムでも色々面白い話があるんだけど、それはまた別の機会に。とにかく、まずはパリに移動しないといけない。ヨーロッパでは鉄道が高いので、貧乏人の旅行はバスだ。ヨーロッパ中をサービスエリアにしたバス会社がいくつもある。ストックホルムからパリだと、バスを何度か乗り換え、デンマーク、ドイツ、ベルギー、ルクセンブルクを経てフランスに入る。所要時間は確か30時間だった。

ユーロ導入前のことなので、経由国全てで通貨が違う。バスが休憩に止まる場所の売店だと外貨が使えることも多いけど、レートは悪い。一々両替するのはその度に手数料が嵩んでもっとレートが悪くなる。そこで、経由地ではなるべく金を遣わないことにした。出発前にスーパーで2Lの水とでっかいパンを買って持ち込み、それで30時間の長旅を乗り切ったのだ。

さて、パリである。知人のアパルトマンは左岸の南の方、今にして思えば多分14区のあたりにあった。メトロよりバスが便利だというので、主にバスで動き回っていた。メトロ、バス共通の1週間乗り放題パスを買ったので、移動に不便はなかった。パスには顔写真が必要なんだけど、駅のコイン式写真機が当時既にデジタル式だった。

知人はフランスでも知り合いの大工仕事を手伝ったりして小銭を稼いでいるみたいだった。法的にはグレーじゃなくて、はっきり違法就労だと思う。たろ父も1日だけ誰かの部屋に鍵を増設する仕事を手伝った。(賃金は貰ってない)それ以外は昼間は一人でぶらぶら観光していた。時間と足だけはあったけどお金がなかったので、ルーブルもエッフェル塔もノートルダムも、全部外から見ただけである。華やかなシャンゼリゼを歩きながら、カフェにも入らずスーパーで買ったパンを囓ってペットボトルに入れた水道水を飲んでいた。

食事は、朝は近所のパン屋さんでパンを買い、昼は出先のサンドイッチとかケバブ、夜は知人と一緒にスーパーで食材を買って自炊というパターンだった。安いテーブルワインを買ったりもしたけど、紙パック入りで5フランとかだったように思う。エビアンみたいな高級なミネラルウォーターより安かった。

日曜日の朝、知人が面白いものがあるとマルシェ(市場)が立っている近所の広場に連れて行ってくれた。週末だけマルシェが立つらしい。色とりどりの野菜や果物があったけど、知人は見てるだけ買おうとしない。やがて昼になると皆店を畳んで帰って行った。「そろそろ行こうか」というのでついて行くと、売れ残った品物が置きっぱなしになっていた。それを失敬するのだ。気がつくと、いつの間にかどこからともなく移民っぽい人達が来ていて、売れ残りを漁っている。ものの10分ほどで、売れ残りは綺麗になくなっていた。これはこれで一つの合理的なシステムなんだろう。その日の夕食は久々のごちそうだった。

事前にもう少し色々調べて勉強しておけば、同じ金を掛けない旅行でももっと有意義にできたかもしれない。ただ、特に目的を決めずにただその町の色々な通りを歩いてみる、という旅も悪くはない。リスクの「勘所」が分かっていない若者が慣れない海外で無茶をするのはとても危険なのでお勧めはできないけど、無茶をしない範囲で色々変わった経験をするのは悪くないと思う。

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