電波時計

投稿者: | 2013年2月6日

電波時計は、言わずと知れた時刻合わせの必要がない時計だ。日本では福島と九州にある送信局(JJY)からの電波でほぼ全国をカバーしている。ここ数年で低価格化が進み、デジタル表示の置時計タイプだと1000円程度のものも見かける。アナログ式はもう少し値が張るようだが、これは標準電波で補正した内部時計と針の動きを機械的に同期させる機構が必要になるからだろう。
そもそも、機械の制御用などではない、人間が見るための時計にどこまでの精度を求めるのかはほとんど個人の嗜好とか趣味の領域だ。デシ秒(0.1秒)オーダー未満のズレなんて人の目では判別できないし、数秒程度の狂いが日常生活で何らかの問題になることなんてまずない。2~3分までなら困ることは少ないだろう。テレビ番組の最初2~3分を見逃したところでどうせほとんどコマーシャルだし、出勤前の忙しい朝にしても、私が通勤に使っているJR阪和線は5分程度の遅れなんて日常茶飯事なのだ。
それでも、私は時計に正確性を求めたい。特に毎日身につけている腕時計については、秒単位の精度(さすがにミリ秒とかはどうでもいい)で時を刻んでいてくれると嬉しい。それなんか意味あるんかとか、そもそもお前時間の管理なんかできてへんやろとか言われると全くその通りなので返す言葉もないのだが、だから趣味って言ってるじゃん。
そんなわけで、電波式の腕時計にはずっと憧れていたのだが、10年以上使っていた腕時計が問題なく動いている間は買い換える気にならず、漸く手に入れたのは一昨年のことである。シンプルだが上品なデザインで、日本の標準電波だけでなく北米、イギリス、ドイツ、中国地域の全6局に対応し、タイムゾーンを跨いで使え、サマータイムも自動で修正してくれるという優れものだ。フランスに旅行した際、パリはもちろん、南端のニースでも全く問題なく電波を受信して自動修正してくれた。すばらしい。
ところが。ところがである、なんと自宅では電波が受信できず時刻補正ができないのだ。あれか、世界で使えて自宅で圏外というヤツか。40kHzとか60kHzの長波なので、携帯電話で使われる数100MHzとか数GHzに比べて屋内にも届きやすく、日本全国を「ほぼ」カバーしてるんじゃなかったのか。なんで俺とこだけ例外やねん。毎日夜中の一定時刻に自動的に補正しているらしいが、時計を家中のどこに置いていても悉く失敗しているのだ。最近、ベランダの一角では受信できることを発見したけど、さすがに夜の間ベランダに放置しておくことはできない。夜中の自動補正の他にも、手動でもボタン一つで補正ができるのだが、自宅だけでなく、通勤経路でも職場の自席でも全く受信できないのだ。職場には電波式の掛時計があるので油断していたのだが、アンテナサイズに制約のある腕時計は受信感度がやや劣るようだ。
さて、私は電波式の腕時計を買った意味があったのだろうか。いやいや、弱気(?)になってはいかん。もちろんよい買い物だったに決まってるじゃないか。旅行や出張で何度か外泊しているが、何も気にせず時計を身に着けたまま寝ていても例外なく受信、時刻補正に成功している。若狭の田舎の旅館でも、窓の前には隣のビルの壁しかない東京のホテルでも。それに、手動受信なら伊丹空港に向かう空港バスで阪神高速池田線を走っている間も受信・補正ができることを発見した。伊丹空港にはたまに行くし、どうせ空港バスに乗っている間は他にすることもないのだ。実際、今の時計にしてから5秒以上ズレていたことはないはずだ。
ということで、私は自分の電波式(しかもソーラー発電で電池交換も不要なのだ)の腕時計に満足しているし、これっぽっちも後悔なんかしていないったらいないのだけど、まあ何とかできるものならしたいとは思う。家の中にどこか1ヶ所でも安定して標準電波を受信できる場所があれば、そこで受信した電波を増幅して再送信するレピーターのようなものがあればいいわけで、実際にそうした製品もある。でも我が家の場合は今のところベランダ(屋外)しか受信できる場所がないので、受信アンテナだけ延長して引っ張るとかしない限り難しい。世の中にこれだけ安価な電波時計が氾濫し、建物の奥の部屋や地下室など、電波が絶対に届かないようなところにも時計はあったりするのだから、何か別の方法で正確な時刻を得て標準電波を模擬した電波で時刻情報を送信するようなモノやサービスがあってもいいんじゃないか。調べてみるとあるにはあるのだけど、個人が家庭でお手軽に試せるような価格帯のものはなかなかない。余り需要がないのだろうか。
標準電波の仕様は公開されているので、模擬した波形を作るのはそんなに難しくはない。簡単なプログラムで生成し、パソコンのライン出力から干渉派(ノイズ)に乗せて輻射するようなものもある。iPhoneやAndroid用のアプリも公開されているけど、如何せん出力が弱すぎて常用するには実用性が低い。時刻情報なんてインターネットに接続していればNTPで十分な精度の情報が得られるのだから、WiFiで取ってきて無線局免許の不要な特定小電力の範囲で模擬標準電波を輻射するような装置、誰か3000円くらいで作って売ってくれないかなあ。

電波時計」への1件のフィードバック

  1. なな

    アンテナが内蔵されてる部分を送信所に向けてもダメですか。

    ブースターを使ったらどうでしょうか。

    返信

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