データ保存

投稿者: | 2013年8月6日

太郎が生まれた頃のビデオは当初8ミリビデオで撮影し、その後VHSに録画、数年前にビデオデッキを処分する前にDVD-Rにダビングしてあった。ところがそのDVD-Rが読み取り不能で再生できなくなっていることが判明したので、幸いまだ捨てていなかったVHSテープを後生大事に保存していたのだ。最近、実家にVHSも再生できるBDレコーダーがあることが分かったので、漸く再び電子化できる。今度はメディアがダメになる前にイメージファイルをサーバーに保存するようにしようと思う。
ということで、今回は最近はほとんどがデジタルデータとなっている、個人的な「記録」の保存方法について書いてみよう。
映像や音声を電気信号に変換して記録するには、連続的な波形のまま記録するアナログ方式と、離散的な数値(デジット)に置き換えるデジタル方式がある。アナログ情報というのはコピーの際にどうしてもノイズが入るのでコピーを繰り返すとその度に劣化する。デジタルの場合はいくらコピーを繰り返しても劣化することがない。
ところが、データがアナログでもデジタルでも、それらを記録しているメディアは等しく劣化する。アナログだとメディアが劣化すればデータの質は落ちるけど、それなりに見たり聞いたりすることはできる。一方デジタルデータは読み取れる限りは全く劣化しないけど、ある日読み取り不能になれば全く見ることも聞くこともできなくなる。
家庭にコンピューターが普及しだした’90年代後半、まだ音楽や映像といった大きなデータを電子ファイルで保存するのは一般的ではなく、コンピューターが扱う個人的なデータは文書などのテキストがメインの情報と、あとはせいぜい写真などの画像くらいだった。当時の外部記憶メディアの代表はフロッピーディスクという磁気ディスクだ。ROM(Read Only Memory、読み取り専用)としてはCD-ROMもあったが、自分でCD-Rに書き込めるドライブが安く普及するのは2000年代に入ってからである。3.5インチのフロッピーディスクはWindowsでもMacでもUnixでも扱えたが、1.44MBという容量ではシンプルな文書やごく小さな画像の記録がせいぜいだった。メディアの劣化による読み取り不能も日常茶飯事で、長期保存には向かなかった。
CD-RやCD-RWといった書き込み可能なメディアやそれを扱うドライブが普及すると、データの記録やオフラインでの受け渡しはCD-Rが一般的になった。光ディスクなので読み取りも速く、容量も650MB、後に拡張されて700MBとかなり使い勝手がよくなった。ただし、長期保存という点ではやはり問題があった。工場で高出力のレーザーで焼き付けるCD-ROMは滅多なことで読み取り不能になったりはしないが、出力が小さく、簡単に追記ができるCD-Rは記録面が化学的な経年劣化に弱く、古くなると読み取り不能の発生頻度が高くなる。これは、光ディスクであるDVDやBDには全て共通する問題だ。
CD-Rは追記が可能で、CD-RWは書き換えも可能だが、ハードディスクやフロッピーディスクなどの磁気ディスクのようなランダムアクセスはできない。CD-RWはアプリケーションを常駐させることで擬似的にランダムアクセスのような使い方もできるが、一般的にはならなかった。
日本以外ではあまり普及しなかったが、MOというメディアも広く使われていた。これは光磁気ディスクというユニークな方式で、データの記録はレーザーで加熱した上で磁界をかけて行い、読み取りは光ディスクのように低出力レーザーの反射で行うというものだ。磁界だけでは記録面に影響がないため磁気によるデータ破損に強く、CD-RやDVD-Rのように紫外線で劣化することもない。記録面は保護層で守られ、更にカートリッジに収められているので機械的な破損にも強く、長期保存に適したメディアだった。ランダムアクセスできることからも一部で根強い人気を保っていたが、CD-RやDVD-Rのメディアが安価に出回るようになったこともあり、家庭用としてはあまり普及しなかった。
ちなみに、日本以外でMOに代わって普及していたのはZipドライブという磁気メディアだ。ドライブもメディアも安く、家庭用にも普及した。日本では逆にほとんど普及しなかった。MOと同じく、CDやDVDに押される形で市場から姿を消した。
2000年代に入ってデータの持ち運びの主流になったのがUSBメモリなどのフラッシュROMだ。元々は基板上でBIOSなどのプログラムを電源が切れた状態でも保持するROMを、電気的に書き換え可能としたEEPROMから発展した技術だ。ROMだけどフラッシュ(書き換え)できる、ということでROMでもRAMでもなく、不揮発性メモリと呼ばれたりする。年々記憶容量の増加と価格低下が続き、今やHDDを置き換えるSDDも一般的になりつつある。非常に手軽で便利なものだが、構造上使用に伴う劣化や経年劣化が避けられず、データの長期保存には向かない。

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