Pandemic (H1N1) 2009については、その呼び方も含め変化が激しいので数ヶ月後に読み返すととんでもない間違いを見つけたりしそうですが、ここではあくまでも2009年9月末時点のたろ父の雑感を書いています。これを読んで医学的判断の根拠にするような人はいないと思うので免責がどうのとか自己責任で云々は省略。
9/15に日本感染症学会が公表したガイドラインでタミフルの積極的な使用が推奨され、それに対して耐性ウイルス出現の危険性などから批判的な意見があって、9/22にアメリカのCDCが、9/25にWHOが発表した文書でそれぞれタミフルの予防投与は控えるように提言したと報道されたことから、「そらみたことか。日本感染症学会は何考えてるんじゃゴルァ」みたいな論調が目に付くというのがこれを書いている時点の状況です。
CDCとWHOの発表については朝日新聞からの引用が多いようですが、記事の要約として「『タミフル予防投与避けて』 米機関、耐性ウイルス考慮」とか「タミフル予防投与は控えて 耐性ウイルス生む原因に」とかまとめてくれています。耐性ウイルス発生のメカニズムには個人的に興味もあるので、抗ウイルス薬の使用と耐性ウイルス蔓延の因果関係が遂に証明されたのかと思ってそれぞれの原文を読んでみました。
ある程度予想はしていましたが、朝日新聞の記事は間違いではないもののかなり偏った解釈で、要約に関してはミスリーディングだと感じました。細かい話は省略しますが、たろ父の結論としては日本感染症学会の提言はWHOやCDCと矛盾するものではありません。批判的な意見の多くは朝日新聞などの報道という二次情報を基にしており、WHOやCDCの発表内容を誤解したまま批判しているようです。ただの翻訳ではなく、要約して記事にする時点である程度バイアスがかかるのは仕方のないことですし、分かりやすくするために正確性を犠牲にして単純化するのもかならずしも悪いことではないでしょう。 今回はたまたまある程度予備知識もあり、原文がWebで公開されていて簡単に読むことができたので原文に当たることができましたが、たろ父も普通はそこまでしません。新聞記事だけで物事を分かった気になるのは危険な場合もある、ということを学んだ記念に書き残しておきます。
※よく誤解されている事を1点だけ指摘すると、薬物の濫用が耐性菌や耐性ウイルスを生む例はいっぱいありますが、ことタミフル耐性のインフルエンザに関しては現在蔓延しているのは偶然の突然変異によるものとされており、タミフル濫用との関連は今のところ証明されていません。WHOの記事の中では、新型ウイルスに暴露後タミフルを予防投与され、かつ発症した場合は耐性ウイルスの増殖が疑われる、という表現になっており、朝日の要約とは随分ニュアンスが異なります。