昨夜、珍しく残業でちょっと遅く帰ると、玄関前の廊下に仏頂面した太郎が転がっていた。何かで叱られたらしい。聞いてみると、「たろうくん、たろうやのに かおりちゃん、じろうってゆっていじわるする」「たろうくんわるかったけど、かおりちゃんもわるかった。ふたりがわるかった」とか何とかうだうだ言っている。最近この、自分の非もとりあえず認めておいて、でも相手も悪かったからおあいこ、という論法を覚えたようだ。友達と喧嘩した時の落しどころとしては有効だろうが、叱られた時に使ってどうする。「構造計算書を偽造した私も悪いですが、それを強要した施工会社や知っていて売ったデベロッパーはもっと悪質です。ですからここはおあいこって事で…」とか言う気か。何でじろうなのかよく分からんが、すぐに言い逃れしようとするのは困ったものだ。
妻の人(一部で流行っている呼称を使ってみました)に確認したところ、「ハウルの動く城」を観ていて、よくある事だがもう終わりにして片付けろと言っても観るのを止めず、大事にすると約束した犬のぬいぐるみもその辺にに放りっぱなしで、挙句「リト」と呼んでいるその犬をハウルの話に出てくる犬に倣って「ヒン」にすると言い出し、だったら太郎は次郎にすると、まぁそういうことだった。きっかけは何にしろ、最近叱られると咄嗟に言い訳するクセがあり、それで更に叱られるのだ。毎度毎度叱っていたらこちらも大変なので面倒な時はそのまま流したりもするのだが、たまにはしっかりと叱らなければいけない。今回は、しっかりやることにした。
とは言え、夕刻ともなると太郎も疲れている。一生懸命話を聞いているのだが、はっきり言って全然理解できていない。こちらは、真剣な顔をして素っ頓狂なことを言う太郎と目を合わせているとともすれば吹き出しそうになる。笑ってしまえば負けだ。姑息な4歳児は親が既に怒りモードでないことを目敏く見抜き、勝手に許して貰った気になる。それまでの苦労は水泡と化すわけだ。今回は、何とか耐えた。疲れ切ってほぼ何も理解できないながらも強い反省を促し、遂には我慢できずに泣きじゃくりながら「いいこになる」と約束させた。どうやって良い子になんぞなれるのかなんてどうせ分かっちゃいない。いいのだ。赤子のようにわんわん泣く太郎をしっかりと抱きしめながら、親は思うのである。
勝った。