一人っ子の故か、ただ単に性格によるものか、太郎はどうしようもない甘えたの根性なしだ。もっと闘争心を、とまでは言わないがもう5歳なんだしもうちょっと粘りというか、根性があってもいいんじゃないだろうか。保育園で先生や友達の前、特に小さい子の前で怒られた時なんかは必死で平静を装うしょうもないプライドだけはあるクセに、家でいるとちょっと怒られるとすぐに絶望する。このことは確か先月も書いた。
何よりも腹立たしいのは、優しくするとすぐにつけあがるのことだ。例えば、食事前には禁止されているはずのお菓子を食べてしまったためにご飯が食べられなくなった時。基本的にご飯を残すことは許されないので泣きながらでもちびちび食べるのだが、少し優しく「もうお腹いっぱいなんか?」と一言声をかけられるともうその瞬間に許されたと思うらしく、表情だけは哀れっぽく「うん…」と頷いてみたりする。特別に残してよい、と許可を与えようもんならすっかり安心しきって、「たろうくん、いっぱいがんばったけど、もうおなかこんなにパンパンや」と腹を出して見せたり、調子いいことこの上ない。ヘタをすると5分後にはすっかり忘れて「たろうくん、アイスクリームたべたいな」とかほざいて、こっぴどく叱られたりするのだ。
何につけこの調子で、優しくすればつけあがり、厳しくすれば泣いてお漏らしするのだ。正直、こんな小さい子供相手に自分がここまで腹を立てるとは驚きだ。今思えば、2歳くらいまでは手は掛かるけどそういう意味では楽だったと思う。
太郎がまだ小さかった頃、外で子供のことをきつく叱っている親を見かけると「あんなに叱らなくても、子供だってちゃんと言い聞かせれば分かるのに」と我ながら甘っちょろいことを思っていたものである。今、たまに自分がそういう目で見られていることに気付いたりする。先日も買い物の途中で駄々をこねる太郎を叱っていた時に眉をひそめて見ていた若いお母さん、まあ2年もすればあなたも分かる。今はまだ小さいが、あなたの子供もなかなか悪たれな面構えをしていたではないか。