太郎は本が好きです。そのこと自体は決して悪いことではないのですが、何事も過ぎたるは及ばざるが如しで、没頭すると周りが見えなくなって本来するべきことが全くできなくなるという弊害があります。ゲームでも何でも同じだとは思いますが、たまたま好きな対象が本ということで教室でも容易にアクセスでき、しかも自席で静かに読んでいると目立たないので注意を受けることも少なく、また何となく「本を読むことは良いこと」というコンセンサスっぽいものがあるためそれに甘えて調子に乗っている面もあります。
昨日、学校でなんちゃらフェスティバルという文化祭のようなものがあり、半休を取って見に行きました。模擬店のようなものをしているのですが、太郎の担当はマグネット魚釣りで説明もきちんとでき、楽しそうにやっていたのでそれはいいのです。問題はプログラムが終わり、教室で帰りの会をやっていた時です。席に着くや否や太郎は読書を始めます。教室の前には日直の子が立って何か喋っていたりして、あくまでも帰りの会の時間であって決して読書の時間でも自由時間でもありません。帰りの会は粛々と(ではないけど)進められ、掃除の代わりに各自が自分の周りのゴミを10個ずつ拾ったり、教室の後ろにある棚からランドセルを持ってきたり、その他持って帰るものを用意したりしている間、太郎は一切周囲を顧みることなく、当然ゴミも拾わず、用意もせず、ひたすら読書を続けています。遊んでいる子は先生に注意されたりしていますが、じっと動かず読書を続ける太郎は目に付かないらしく注意もされません。たろ父がはらはらしながら見ている廊下からは一番離れた奥の席なので声をかけることもできません。
帰りの会は滞りなく(でもないけど)終わり、最後に帰りの挨拶をするため全員が起立しました。そこで初めてふと顔を上げる太郎。漸く気が付いたようにも見えますが、どうもちょうどたまたま読み終わったようです。悪びれることもなく本を書棚に返し、ひょこひょことランドセルを取りに行き、帰る用意を始めます。先生が言い忘れていた連絡事項があったりして帰りの挨拶が少し遅れ、全員でさようならを言った時には太郎はちゃっかりランドセルを背負って帽子も被り、すました顔で出てきました。
その手際の良さは去年の太郎からは(今でも普段の様子からは)想像できないものであり、それはそれで喜ばしいことでもあるのですが、やっぱり褒められたことではありません。去年の担任の先生だったら叱られただろうな。親としてもあまり叱られないことに甘えてはいけないのでしょうが、正直なところ気の重さが低減されてとても助かっています。ありがとう、T先生。